捨印とは?その意味と押す際の注意事項を解説

捨印とは?その意味と押す際の注意事項を解説

公開日:2023.10.3 最終更新日:2024.10.31

お金に関わる書類や公的な書類などを記入するときに、捨印を押してくださいと言われたことはありませんか。言われるがまま捨印を押したものの、その目的や効果などを知らない人も多いのではないでしょうか。

捨印の意味や目的を知らないと、思わぬトラブルに遭ってしまう恐れがあります。そこで今回は、捨印の意味や捨印を押すときの注意点などをご紹介します。

捨印とは?

捨印とは、あらかじめ文書の余白部分に押す印鑑のことです。文書内で使った印鑑と同じものを押しておきます。

捨印は、押した時点では効力を発揮しません。あとで書類を受け取った人が中身を確認した際に誤りがあった場合、訂正印と同じ役割を持ちます。

本来であれば、書類の修正は記入者本人が行うものですが、記入者の手元を離れてしまったときは本人が修正できないこともあります。そのような場合でも、あとから修正に対応できるように押しておくものです。

捨印を用いる書類の例

捨印は、婚姻届離婚届出生届など役所へ提出する書類や、司法書士に依頼する「登記申請書」などに押されます。財産や戸籍などの重要な情報が書かれた書類でも、手元から離れると自分で修正するのが難しいため、捨印で対応するのが一般的です。

そのほか、口座振替依頼書など銀行へ提出する書類にも捨印を押すケースも多々あります。

捨印を用いる範囲

捨印が効力を発揮する範囲に明確な規定はありません。書類に押した捨印を根拠として、受け取った側がどの範囲まで修正を加えるかは契約者同士で許容範囲を取り決めます。

許容範囲を取り決めず、相手に委ねると契約に関する内容が大きく変更されてしまうリスクもあります。誤字脱字や書き損じなどの明確で軽微なものに限って、受け取った側に修正の権利を与えるのが一般的です。

【ケース別】捨印の正しい押し方

捨印はどのように押すと良いのでしょうか。ここでは、ケース別に捨印の押し方について、注意点も合わせてご紹介します。

契約書が1枚のとき

複写のページがなく契約書が1枚の場合は、文書の上部の空欄に押すのが一般的です。なかには、捨印用の捺印欄が設けられている書類もあります。

捨印は、契約書に押したものと同じ判子を使用しましょう。契約書に実印を押した場合は実印を、認印を押した場合は認印を押しましょう。捨印は書類の内容に誤りがあったときに訂正印としての役割を果たすので、契約書に押印したものと同じ印鑑でなければ意味がありません

契約書が2枚以上あるとき

契約書が2枚以上あるときは、すべてのページに捨印を押すのが一般的です。どのページで修正が必要になるか分からないためです。また、すべてのページにおいて同じ位置になるよう押しましょう。

契約書の署名者が2名以上いるとき

同じ契約書の署名者が2名以上いるときは、全員が捨印を押す必要があります。これも誰が書いた部分に修正が入るか分からないためです。

複数人の捨印を押す際も、ほかのケースと同じように、文書の上部に押します。全員がもれなく押しているかを確認してから提出しましょう。

捨印を押す際の注意点

捨印は、あらかじめ押しておけば、修正が生じた場合でもわざわざ書類を返送する手間もなく、効率良く手続きを進められるのでメリットが多いように感じます。しかし、押すときには気をつけて押さなければ、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるのです。

捨印の効力が認められる範囲について明確に規定されていないことから、悪用される可能性があることを忘れてはいけません。

相手方に文書を書き換えられ、自分にとって不利な内容の契約になってしまう恐れがあります。捨印は義務ではないため、不安を感じる場合は捨印を拒否しましょう。

とはいえ、公的な書類の場合は、捨印がなければ受理してもらえない可能性もあります。捨印を使用する場合は、公的な書類や信頼できる相手との契約時のみ使用するのがおすすめです。

捨印によるトラブルを避ける方法

前述のとおり、捨印を押すことによって、悪用される可能性があります。捨印にまつわるトラブルを避ける対策についてご紹介します。

捨印の使用方法をすり合わせる

捨印を押す際には、どのように使用するのかを相手方と話し合っておくことが大切です。例えば、修正が必要になった場合にどの程度の修正を相手方が行うのか聞いておきましょう。

大半が誤字脱字の修正が目的ですが、誤字脱字の修正以外の目的で使用する場合、どうすべきかお互いに理解しておくとトラブルが生じるリスクを抑えられます。

何ひとつ疑問を持たずに捨印を押すのは避け、使用される目的についてしっかりと確認し、把握しておきましょう。

捨印を押した書類のコピーをとっておく

捨印を押した書類のコピーをとっておくことも自衛として有効です。捨印を巡って万が一トラブルになった際、訂正前と訂正後を見比べられるようにしておきましょう。捨印を悪用された場合の解決策として効果的です。

コピーをとっておくことで、内容を勝手に変更されることを未然に防げるようにもなります。また、万が一変更されても変更前の書類のコピーがあれば、その証拠として提出することもできます。

捨印であることを明記する

自分は捨印として押したはずなのに、違う用途で使用されていたといった悪用を防ぐことも大切です。あらかじめ捨印欄がある書類ならそのまま押しても良いですが、捨印の欄がない書類に捨印を押す場合は印影の近くに「捨印」と明記しておけば悪用されづらくなります。

捨印として押したという意思が書類を見て一目瞭然になるように、忘れずに明記しておきましょう。

捨印で文書を訂正する方法

ここまでは捨印を押す側の注意について解説してきました。一方で、自分が捨印を押した書類を受け取る側になったときは、どのように書類を訂正すれば良いのでしょうか。

捨印が押された書類を訂正する場合は、訂正印を使用するときと同じ方法で訂正すれば問題ありません。

まず、誤字脱字がある部分に二重線を引きます。二重線を引いた場所の近くに正しい内容を記入しましょう。ここまでは、訂正印を使用する際の方法とほぼ同じです。

捨印がある書類の場合は、捨印の近くに二重線で消した文字数と追加した文字数を記載します。例えば「3文字削除、2文字追加」などのように書いておけば問題ありません。もし、同じ書類で複数の部分の訂正をした場合は、その文字数の合計を記載しておきましょう。

訂正印は、訂正する箇所すべてに押す必要があります。しかし、捨印が押してある書類なら印影が1ヶ所で済むため、作業に手間がかからないのもメリットです。

まとめ

何気なく押している捨印ですが、実は悪用されるリスクもあるのです。そもそも捨印は押す義務がないものなので、捨印を求められた場合、拒否しても構いません。ただし、公的な書類などは捨印がないと受理してもらえないこともあるので注意しましょう。

捨印を押す場合は、捨印を押すことによるリスクをきちんと知り、書類を受け取る側との認識のすり合わせを行う必要があります。正しい知識で捨印を押し、トラブルに巻き込まれないようにしましょう。