針葉樹と広葉樹の違いとは?木材としての特徴や用途について解説

針葉樹と広葉樹の違いとは?木材としての特徴や用途について解説

公開日:2024.7.29 最終更新日:2024.10.30

針葉樹と広葉樹の違いは、見た目だけではないことをご存じでしょうか?

日本における森林の状況、そして針葉樹と広葉樹の違いや特徴についても詳しく解説していきます。

身の回りにある木製の製品を選ぶ際にも役立つこと間違いなしなので、ぜひ最後まで読んでみてください。

針葉樹と広葉樹の違い

ご存じの方も多いと思いますが、針葉樹と広葉樹の違いは見た目です。

針葉樹は文字通り、葉っぱの形状は針のように細長いのが特徴的で、空に向かって真っすぐ育つものが多いです。そして広葉樹は葉っぱに丸みがあり、樹形自体にも丸みを帯びています。

針葉樹の多くは常緑樹ですが、広葉樹には常緑樹と落葉樹があるという違いも。

また針葉樹と広葉樹の違いは見た目だけではなく、木を形成する組織や細胞も大きく異なります。

針葉樹は仮道管という組織が水や樹液を運び、木を支える役目まで担っています。一方で広葉樹は複雑な組織構成になっており、役目は分業制です。幹は同管と木繊維からできており、同管が水や樹液を運び、木繊維が木を支えています。

また広葉樹がもつ細胞は種類が多く複雑なのに対して、針葉樹はシンプル。

針葉樹と広葉樹は見た目だけでなく、組織や細胞といった作りでも大きく異なっています。

日本における針葉樹林と広葉樹の割合

日本の国土を占める森林面積は約2,500万ヘクタールで、国土面積の約7割を占めています。そして針葉樹はその半数以上を占めると言われています。

しかし、人工林に限って見てみると針葉樹の割合は9割以上です。日本の森林の約4割は人工林によって成り立っています。

つまり天然林においてはほとんどが広葉樹であり、針葉樹は人工的に植えられたものであるということになります。

広葉樹は木炭として使用されていた

広葉樹は古くから木炭として使用されてきました。

木を構成する細胞間には無数のすき間があります。広葉樹は針葉樹に比べてそのすき間が少ないことから、木炭として使用した場合に長持ちしやすいことが理由のようです。

針葉樹は空気を含む分着火しやすいが、すぐに燃え尽きてしまうため木炭には不向きとされています。

実際バーベキューや焼き鳥屋などで使用される備長炭や黒炭といわれるものの多くは、カシ系やナラ系など、広葉樹が使用されることが多い傾向です。

針葉樹は育成林がきっかけで急増

戦後の昭和20〜30年代(1945〜55年頃)に木材需要が急増し、政府が拡大造林政策を行い、人工による植林が始まりました。

その際、比較的成長が早く、建築用材として利用価値も高い針葉樹が植えられたのです。

出典:第1部 第1章 第1節 森林の適正な整備・保全の推進(1):林野庁 (maff.go.jp)

上記は木材として利用できる森林資源量の目安を表す「森林蓄積」の推移です。

天然林を含めた森林蓄積の数値は右肩あがりで増加し、中でも人工林の割合は顕著に増えているのがわかります。

人工林の9割以上を針葉樹が占めているため、これは同時に針葉樹が増えていることも示しています。

針葉樹と広葉樹の木材としての特徴と用途

ほどよい堅さとしなやかさ、強度をもつ木材は建築材料として人気です。

木材と言っても、針葉樹と広葉樹では堅さが異なります。英語で針葉樹はsoftwood広葉樹はhardwoodと言われることからもわかるように、針葉樹はしなやか、広葉樹は堅い傾向にあります。

さらに重さも異なります。針葉樹は内部に多く空気を含む分、広葉樹に比べると軽いです。

ただ木材は自然から生まれているため、強度には個体差があります。強度性能を確認するには樹種ではなく、JASマークを目安に選ぶようにしましょう。

柱や梁に適した針葉樹「スギ」「ヒノキ」「マツ」

針葉樹は約540種あると言われており、代表的なものにスギやヒノキ、マツがあります。

マツは観賞用のイメージがありますが、パイン材という名前でテーブルや椅子など家具に多く使われています。

単純な構造の針葉樹は材としてまっすぐ切り出ししやすいため、柱や梁に用いられますが、夏は冷たく、冬は暖かいという特長があるため、木の温かみを感じられるとフローリングに選ぶ人も。

柱には歪みが少なく腐りにくい木が適しており、「スギ」や「ヒノキ」の使用が一般的です。強度を重視する場合はヒノキがおすすめです。

また梁には、さらに強度が高いとされるマツが向いています。

家具やフローリングに適した広葉樹「ケヤキ」「カシ」「シラカバ」

広葉樹の種類は約20万種と、針葉樹と比べても比にならない種類の多さです。代表的なものとして、ケヤキ、カシ、シラカバがあげられます。

針葉樹に比べると基本的に堅い樹木ですが、なかには柔らかいものもあります。樹種によって木目や木材の色が異なるため、さまざまな風合いがあるのも特長です。

堅く傷がつきにくく強度があるため、室内で靴を脱がない習慣のある国ではフローリング素材として重宝されています。

また広葉樹は色合いや模様の種類が豊富なため、内装材としても適しています。

樹種の特性を活かしてつくる木製はんこ

画像出典:伊勢桧(いせひのき)印鑑 個人用 | 美しい印鑑の西野オンライン工房

家具や内装に使用される木材は、針葉樹・広葉樹それぞれの特性を活かしてハンコにも用いられています。

黒水牛や象牙など印材はごくわずかに限られていましたが、木材の加工技術が発展し、木製の印鑑が登場しました。木製の印鑑には天然木を切り出したままのものと、耐久性を高めた圧縮木材があります。

北方寒冷地の広葉樹である真樺(バーチ材)を使用した彩樺(さいか)、鹿児島県産の上質木材として知られる薩摩本柘は耐久性のある印材として知られています。

そして薩摩本柘と同じく高級材として人気なのが、ヒノキです。柘などの広葉樹に比べると硬度が劣るため印鑑には不向きとされていましたが、圧縮加工技術の発達で印材として必要な強度を実現できるようになりました。

伊勢桧は、伊勢神宮など神社仏閣の社殿に古来使用されてきた格式高い木材です。年輪が密で高い強度をもつと言われている種類で、さらに圧縮加工することで強固な強度の印材へと仕上げています。

【まとめ】針葉樹と広葉樹の違いは「見た目・組織・細胞」

見た目だけでなく、組織や細胞から根本的に異なる針葉樹と広葉樹。
強度や軽さにも違いがあり、使用用途によって使い分けされています。

広葉樹のほうが強度が高く耐久性があるため、内装材や印材として推奨される場合が多いです。

しかし木材の圧迫加工など木材加工技術は年々発達しており、針葉樹の木材による内装や印鑑の人気も高まっています。

木材は内装や印鑑のほか、ペンの軸など多くの文具にも使われています。自然から生まれる世界にひとつの色合いや、木目のデザインを楽しんでみてはいかがでしょうか?