公開日:2025.3.19 最終更新日:2025.3.19
「伝統工芸ってそもそもどういうもの?」
なんとなく想像できても、はっきりとした定義はわからない人も多いのではないでしょうか?
今回の記事では伝統工芸の定義の解説と、日常使いできる伝統工芸品を紹介します。伝統工芸に興味のある方はぜひ最後までお読みください。
伝統工芸とは
伝統工芸には広域な意味でのものと、法律で厳格に定められたものの2つがあります。
定義
伝統工芸とは、長年に渡り受け継がれてきた技法や手法で作り出されたものを指します。法的に厳格な定めはなく、各自治体で独自に認定する場合がほとんどです。
一方、日本の伝統技術を守るために厳格な定義付けをされたものは「伝統的工芸品」と呼ばれます。
伝統的工芸品は下記の項目をすべて満たし、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。
- 主として日常生活の用に供されるもの
- その製造過程の主要部分が手工業的
- 伝統的な技術又は技法により製造されるもの
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
- 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
つまり「伝統的に使用されてきた原材料」を使い「伝統的な技術」で「手作業」で作られ「日常的に使用できるもの」、かつ指定を受けたもののみが「伝統的工芸品」と呼ばれます。
日本伝統工芸の現状
日本の伝統工芸は従事者数、生産額ともに減少傾向にあります。
従事者数 |
生産額 |
|
昭和54年 |
288,000人 |
5,400億円 |
令和6年度 |
48,334人 |
1,050億円 |
従事者数や生産額の減少の理由として、私たちを取り巻く生活様式や雇用環境の変化があげられます。
大量生産・大量消費への移行、そして第一次産業の衰退により原材料の確保が難しくなったことがまず一つの大きな要因です。
さらに細かい作業や長期間の修行など労働環境、給与・休日などの雇用環境が担い手不足へと拍車をかけています。
ほかにも少子高齢化や核家族化により伝統工芸品を使用した、節句や正月などの行事の簡略化も伝統工芸の衰退に影響を与えていると考えられます。
代表的な日本伝統工芸品
全盛期に比べると衰退しているものの、インバウンドの影響もあり、日本の伝統工芸品の良さは再度脚光を浴びつつあります。
定義にもあるように伝統工芸品は「日常使いできる」のが条件のひとつです。
節句や正月など特別なときでなくとも、伝統技法で作られた品を日常で使えるのが伝統工芸の良さでもあります。
ここでは国が指定した伝統工芸品の一部をご紹介します。
※2024年10月17日時点
織物
画像引用:【公式】八王子織物工業組合
着物で有名な京都の「西陣織」、鹿児島県奄美市や宮崎県都城市などで製造される「本場大島紬」など、伝統工芸品として指定された織物は38品目あります。
着物や帯といった和装に使用されることが多かった織物ですが、和服を着ない現代の人でも伝統工芸の織物製品を使える工夫もされています。
八王子市やあきる野市で製造されている「多摩織」もそのひとつ。着物や羽織として古来の形での使用のほか、ネクタイやスカーフとして製品化されており、国内外から高く評価されています。
陶磁器
画像引用:砥部焼協同組合
国の伝統工芸品に指定されている陶磁器には「京焼・清水焼」や「信楽焼」「伊万里・有田焼」など32品目あります。
陶磁器は日常使いしやすいものであるため、伝統工芸を深く知らない人でも聞き馴染みがあるものが多いのではないでしょうか?
織物同様、陶磁器も現代に合わせて使いやすく進化しています。
愛媛県の砥部町を主な産地とする「砥部焼」は女性や若手の作家によってモダンで新鮮な作品も多く生み出されており、より日常使いしやすい伝統工芸品となっています。
漆器
画像引用:輪島漆器商工業協同組合
国の伝統工芸品に指定されている漆器には石川県輪島市の「輪島塗」や京都市の「京漆器」、那覇市など沖縄県内で製造されている「琉球漆器」など23品目があります。
輪島塗の多くの工房は能登半島地震と豪雨災害でとても大きな被害を受けましたが、伝統技術を残すため今も再建に向けて頑張っています。
漆器は高級感のある見た目から日常使いしにくいと思われがちですが、トレーや照明、花器などインテリアに取り入れやすいものも多く、暮らしに彩りを与えてくれる伝統工芸品です。
木工品
画像引用:大館曲げわっぱ協同組合|秋田県大館市の伝統工芸品、大館曲げわっぱ
国の伝統工芸品に指定される木工品(竹工品含む)には福井県越前市の「越前箪笥(えちぜんたんす)」や大阪市などで製造される「大阪欄間(らんま)」など33品目があります。
日常使いしやすい木工品としては秋田県大館市の「大館曲げわっぱ」や秋田県の「秋田杉桶樽」があげられます。
木という自然の形に近い木工品の伝統工芸品は、ストレスの多い現代社会を生きる私たちに癒しを与えてくれるアイテムといえるでしょう。
金工品
画像引用:堺刃物商工業協同組合連合会
金工品には岩手県の「南部鉄器」や富山県高岡市の「高岡銅器」など、世界でも知られている伝統工芸品が多くあります。
また「千葉工匠具」や「堺打刃物(さかいうちはもの)」などハサミや包丁といった日常で使用するものも多くあるため、実は知らずに使っている人もいるかもしれません。
国の伝統工芸品に指定された金工品は16品目あります。手頃な価格帯のものも多いため、ぜひひとつこだわりのものとして購入してみてはいかがでしょうか?
和紙
画像引用:伝統工芸 青山スクエア
書道や障子紙に使われる長野県の「内山紙」、工芸紙や包装紙に使われる徳島県の「阿波和紙」など、国の伝統工芸品に指定された和紙は9品目あります。
独特の手触りと風合い、色合いが魅力の和紙は、障子や包装紙として身近にある工芸品です。さらに書画など、別の日本の伝統技術を引き立てるのに欠かせないものでもあります。
文具・その他
画像引用:伝統工芸士・望月煌雅
化粧筆としても人気の高い「熊野筆」や島根県奥出雲横田の「雲州そろばん」など、国の伝統工芸品に指定されている文具は10品目あります。
またその他の伝統工芸品には、山梨県の「甲州手彫印章」が伝統工芸品として指定されています。
牛角や黒水牛、柘といった伝統的に使用されてきた原材料を使い、指定職人が手彫りで仕上げる印鑑です。
参考サイト 工芸品を知る | 伝統工芸 青山スクエア
伝統工芸の職人は資格不要!条件を満たせば伝統工芸士に認定も
冒頭でも解説したように、日本の伝統工芸は担い手不足です。
伝統工芸の職人は資格がなくてもなれます。各工房では後継者になる人材を募っており、民間の専門学校や都道府県運営の訓練センターでは、伝統工芸の技術や知識を学べます。
資格なしでもなれる伝統工芸の職人ですが、一定の条件を満たせば「伝統工芸士」として認定も受けられます。
【まとめ】伝統工芸とは長年受け継がれてきた技法で作り出された工芸品
伝統工芸とは、長年に渡り受け継がれてきた技法や手法で作り出されたものを指します。法的に厳格な定めはなく、各自治体で独自に認定する場合がほとんどです。
一方で、日本の伝統技術を守るために国が厳格に定義付けされたものを「伝統的工芸品」と呼びます。今回は伝統的工芸品に指定される一部の伝統品について紹介しました。
伝統工芸品には手頃な価格で購入できるものや、現代風にお洒落にアレンジされたものも多くあるので、ぜひ一度調べて手に取ってみてください。
日本の伝統工芸について詳しく知りたい方は下記サイトをご覧ください。