公開日:2023.7.10 最終更新日:2024.10.3
法人銀行印は、会社が法人として銀行口座を作成する際や手形・小切手などに押印する際に使用されます。会社実印と似た形状で印影もそこまで大きな違いはありません。これらを使い分ける必要があるか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
今回は、法人銀行印を作成する際の決まりや会社実印と併用するリスクについてご紹介します。
法人銀行印とは?
法人銀行印は、会社が銀行口座を開設する際や預金から支払いをする際、手形や小切手に押印する際に使用する印鑑です。法人銀行印は、あらかじめ銀行に届け出る必要があります。
基本的には経理部長などお金の管理をする人が取り扱うことの多い印鑑ですが、代表取締役社長や代表者などが管理している場合や、代表者印と同一の印鑑で兼用している場合もあります。
主な利用シーンは、銀行や金融機関で法人口座を開設する、法人口座から出金する、小切手や手形を発行するなどです。会社の資産管理に関係するため、代表者印と並んで重要な印鑑であるといえるでしょう。社印(角印)や会社実印(丸印)を作成する際に、一緒に法人銀行印も作っておくのが無難です。
法人銀行印と会社実印(代表者印)は同じでもいい?
法人銀行印と会社実印(代表者印)は印影にあまり違いがなく、兼用している会社も多くあります。しかし、一般的にはこれらは別々の印鑑として作成し、用途に応じて使い分けることが推奨されています。
法人銀行印も会社実印も、どちらも丸い形状で印面が二重になっており 、外側に会社名が刻印されています。内側については、会社実印が「代表取締役印」という役職名が刻印されるのに対し、法人銀行印は「銀行印」という文言が刻印されるのが一般的です。
このように、法人銀行印と会社実印は、内側の文字以外に印面に大きな違いはありません。「1本で済ませられるならその方が良い」と考える方もいるかもしれません。しかし、これらを兼用してしまうと、その印鑑を紛失したり盗難にあったりした場合に、代表者の意思決定もお金の管理も、どちらもできなくなってしまいます。
法人銀行印を作成するのに、そこまで高額な費用はかかりません。会社内だけではなく外部でのリスクを減らすためにも、法人銀行印と会社実印は別々に作成しておくのがおすすめです。
法人銀行印を作る際の決まり
ここでは法人銀行印を作成する際の文字や書体・サイズなどの決まりを紹介します。内側には「銀行之印」と記載、書体は偽造や悪用されにくい書体を選び、サイズは会社実印よりも小さめに作るのが一般的です。
文字
法人銀行印の印面は、外側に会社名、内側に「銀行之印」という文字を組み合わせるのが一般的です。会社実印は内側に「代表取締役之印」「代表者印」などの役職名が入ります。会社実印との違いは、この内側に記載される文字のみです。
書体
法人銀行印の印面の書体に規定はありません。また、外枠に記載する会社名と内枠に記載する「銀行印」の書体をそれぞれ変えるケースもあります。
多くの会社で採用されている書体は「篆書体」と「吉相体」です。これらが人気の理由は、判読がしにくく、偽造や悪用されるリスクが低いことにあります。
篆書体(てんしょたい)
篆書体は約2300年前に秦を統一した始皇帝が漢字を整理してまとめたものです。古い書体ですので、現代漢字とは異なる部分が多くあります。判別がしにくいため、偽造防止に向いている書体のひとつです。
吉相体(きっそうたい)
吉相体は篆書体を少し改良したもので、近年開発された書体です。開運印相としても用いられており、枠に向かって四方八方に文字が広がっている点が特徴といえます。どの書体を選べば良いか迷う際は、篆書体か吉相体を選べば間違いないでしょう。
サイズ
法人銀行印のサイズに決まりはありません。そのため、会社ごとに好きなサイズで作成しても問題はないでしょう。
しかしながら、使用ミスを防ぐために、会社実印や社印サイズを変えて作成されるのが一般的です。特に同じ丸い形状をした会社実印と区別するために、銀行印は会社実印より一回り小さいサイズで作られることが多い傾向にあります。
よく採用されるのは、会社実印が18mm、法人銀行印が16.5mmの大きさです。各法人印の大きさの比較としては、「社印(角印)>会社実印(代表者印)>法人銀行印」となるのが主流です。すべての法人印のサイズを分けていれば一目で見分けられます。
また、会社実印・法人銀行印のような丸い形状の法人印は、「天丸タイプ」と「寸胴タイプ」といった本体の形状で区別することもできます。例えば、会社実印は天丸タイプ、法人銀行印は寸胴タイプと形状を区別して作成すれば、使用ミスを防げるでしょう。
法人銀行印を変更するには?
ここでは法人銀行印を変更する際の手続き方法を紹介します。法人銀行印の変更は金融機関の窓口で行う必要があるため、事前の準備が必要です。
金融機関の窓口で変更手続きを行う
法人銀行印を変更する際は、金融機関の窓口で手続きを行う必要があります。変更時に必要なものは以下の通りです。
<必要なもの>
- 新しい法人銀行印
- 口座の通帳
- キャッシュカード
- 代表者の身分証明書
基本的には上記のもので足りますが、金融機関によって必要なものは異なります。事前に問い合わせておくとスムーズに進むでしょう。
さらに、変更手続きは原則として会社の代表者が行わなければなりません。やむを得ない理由で代理人が変更手続きを行う場合は、委任状が必要になるケースが多くあります。こちらについても、事前に金融機関に問い合わせておくと安心でしょう。
法人銀行印をなくした場合はすぐに金融機関へ連絡する
万が一法人銀行印を紛失してしまい変更が必要となる場合は、すぐに金融機関へ連絡し取引を停止してもらいましょう。紛失した法人銀行印が他の者の手に渡り、悪用されるのを防ぐためです。
紛失した場合は、紛失届や改印届を提出するのが一般的ですが、金融機関では電話やインターネットで紛失にともなう利用停止手続きができます。紛失の場合はこれらを活用し、なるべく早い段階で利用停止するようにしてください。
古い法人銀行印の処分は厳重に行う
法人銀行印は、登録を変更すると新しい法人銀行印に効力が移ります。そのため、それまでに使用していた法人銀行印は効力を失います。
とはいえ、それで安心するのは禁物です。たとえ効力を失ったとしても、刻印されている名前がわかれば、悪用されたり模倣印鑑を作られたりするおそれがあります。
法人銀行印を処分する際は、印面が読み取られることのないようにしてから捨てるようにしましょう。具体的には以下のような工夫をすることをおすすめします。
<捨てる際の工夫>
- 印面をカッターなどで削る
- ライターなどを使って印面を焼く
- 印面の凹凸を接着剤で埋める
最適な方法は法人銀行印の素材によって異なります。印材に合わせて、上記のような工夫をした上で処分するようにしてください。
まとめ
法人銀行印は,会社実印と似た印面で併用することもできます。とはいえ、会社実印とは別に用意し、お金を管理する用途でのみ使用するのがおすすめです。
法人銀行印は、印面の書体・サイズなどに決まりはありません。しかし、偽造や悪用を防ぐために判別しにくい書体を選んだり、会社実印と区別するために少し小さめのサイズで作ったりするのが一般的です。
法人銀行印を変更する際は、金融機関の窓口で手続きを行う必要があります。登録変更後、古い銀行印は効力を失いますが、悪用や模倣印鑑の作成を防止するため、できる限り工夫をして捨てるようにしてください。