公開日:2023.10.20 最終更新日:2024.10.31
個人事業主として開業届を提出し、新しいスタートを切るとき、さまざまな準備に追われることでしょう。そのなかで、屋号入りの印鑑を作ったほうが良いのか迷うこともあるかもしれません。
今回は、屋号入りの印鑑は必要であるかをはじめ、屋号印の種類や注意点、屋号印以外に必要な印鑑など、個人事業主の方に向けて印鑑の知識をご紹介します。
個人事業主に屋号入りの印鑑は必要?
個人事業主とは、法人設立をせずに個人で事業を営んでいる人のことです。開業届を税務署へ提出し、事業開始の申請をすれば個人事業主となれることから法人設立よりも手続きのハードルが低いため、独立後まずは個人事業主にという流れになる方も多いのではないでしょうか。
開業届を提出する際には、屋号を記載する欄が設けられています。屋号とは、個人事業主がビジネスにおいて使用する店舗の名前や商業名を指します。屋号は必須ではなく、実施する事業によっては登録しない方もいます。
そのため、屋号入り印鑑(屋号印)を作るかどうかは任意であり、個人名の実印で代用することもできます。
しかし、将来的に事業を拡大していきたい場合は、屋号印を作っておくのがおすすめです。名刺をはじめ請求書や領収書、融資を受ける際の書類など、屋号が使用される場面は多くあります。
取引時を含むさまざまな場面で屋号印を使えば、事業者としての「箔」と「信頼性」をつけられるでしょう。また、仕事とプライベートで印鑑を使い分けたい方も、屋号印を作ることをおすすめします。
屋号印の種類
屋号印には、丸い形をした「丸印」と四角い形をした「角印」の2種類が存在します。この2種類は、使用する場面が異なり、正しく使い分けることで書類の格が上がり、信頼性にもつながります。丸印と角印の違いや主な使用用途についてご紹介します。
丸印
丸印には、外枠に「屋号」中枠に「代表者印」や「代表之印」と入ります。代表者の個人名が、中枠に入るケースもあります。
主な使用用途は、契約書や開業届、確定申告書類などに押印します。このような書類に「箔」をつけるために丸印を使うともいわれています。
角印
角印には、基本的に「屋号」だけが入ります。「〇〇(屋号)之印」と入っている角印もあり、使用用途としては、請求書や領収書、見積書などの対外的な書類に用いられることが多いです。
このような書類には、押印が不要とされているものもあります。しかし、角印を押すことで書類を受け取った側の印象が良くなるケースもあり、信頼度向上に役立つこともあるでしょう。
個人事業主の屋号印を使用する用途・タイミング
屋号印の使用用途とタイミングについて、丸印と角印に分けてご紹介します。自身の事業内容や普段の取り引きを想定できれば、どちらか一方の屋号印だけで足りるケースもあるでしょう。
丸印の使用用途
丸印は、契約書関係に使用します。先ほどもご紹介したように、開業届や毎年作成する確定申告書にも丸印を押印するのが一般的です。
請負契約書や委任契約書、秘密保持契約書、売買契約書など、さまざまな契約書が存在しますが、業務上、契約書を交わす機会が多い方は、丸印を作っておきましょう。
また、個人事業に「箔」を付ける目的で使用されることが多く、普段の業務では契約書に押印する機会が少ない事業者でも、新しい事業をスタートする意気込みとして丸印を作る方もいます。
角印の使用用途
角印は、主に取引先や見込み顧客に対して使用します。主な押印のタイミングとしては、請求書や納品書、領収書、見積書の発行時が多いです。
このような帳票類は、基本的に押印は不要とされているものの、古くからの慣習で角印が押印されているほうが、相手の印象が良くなるケースも見られます。体裁を整え、信頼度アップを図りたい場合には、ぜひ角印を取り入れてみましょう。
普段の業務で契約書を交わさず取り引きを行うことが多く、請求書や見積書、領収書などを発行する機会が多い方は、角印だけ作っておくのもおすすめです。
個人事業主が屋号入りの印鑑に関する注意点
屋号印は、個人の実印として印鑑登録できません。個人の実印は、個人名以外が入った印鑑は不可というルールがあります。屋号印では、屋号が含まれているため、印鑑登録ができないのです。
そのため、自動車の購入や不動産契約、ローンを組む際には、個人で印鑑登録した実印を押印し印鑑証明を提出します。事業関連で取引先から実印を求められた場合にも、個人名の実印を押印しなければなりません。
領収書や請求書など帳票類で実印を求められることはないですが、契約関係では実印を求められることもあるため、個人の実印も別で用意しておきましょう。
【個人事業主】屋号印以外にも必要な印鑑がある
個人事業主として事業を行っていくなかで、屋号印以外にも準備しておいた方が良い印鑑があります。ここからは、最低限必要となる2種類の印鑑について解説します。
実印
屋号印の注意点でも解説したように、屋号印は実印として印鑑登録できません。そのため、個人の実印を用意する必要があります。
実印とは、居住地の市区町村役場に印鑑登録した印鑑のことです。印鑑登録することで、公的に認められた印鑑となります。
実印は、本人証明の目的で使用するもので、「個人」または「法人」として1本ずつしか持てないルールが決められているのです。
実印の押印は「この契約は自分の意思で決めた」ことを証明するためのもので、非常に重要な役割を持っています。何かを取引をする際に押印を求められることが多く、個人事業主のビジネスシーンでは、金額の大きな契約をする際に押印を求められるケースもあります。
また、事務所や店舗など不動産の取引や契約を行うときや、開業資金や設備の購入資金などで融資を受ける際にも実印が必要です。将来的に事業を拡大して、法人化する際にも実印が必要となります。
このように、実印はさまざまなシーンで求められる重要な印鑑です。実印がないことで仕事を逃してしまわないよう、取引先から信頼を得られるようにしっかり準備しておきましょう。
銀行印
個人事業主で事業を行う場合は、プライベートの銀行口座と事業用口座を分けておく必要があります。事業による入出金を明確にし、会計処理や税務処理をスムーズに行う目的で新たに屋号の事業用口座を開設するのが一般的です。
事業用の口座を開設する際に、必要となるのが銀行印です。銀行印は、銀行に登録する印鑑です、ネットバンクを中心に銀行印不要の銀行もありますが、地方銀行の多くは口座開設時に押印します。
実印を銀行印として使用することもできますが、実印は契約書などに押印する印鑑のため、人目に触れる機会も多いです。セキュリティ面を考慮すれば、銀行印は別で用意しているのが望ましいでしょう。
プライベート口座を開設するときに登録した銀行印も使用できますが、これもセキュリティの観点から、新たに銀行印を作っておくのがおすすめです。
安全面から印鑑は、使い回さないのが無難とされているため、できれば事業用口座を開設する前に、事業用の銀行印も作っておきましょう。
まとめ
屋号入りの印鑑を作りたい個人事業主の方は、ぜひ一度お近くの印章店にご相談してみてください。
屋号入りの印鑑だけでなく、実印や銀行印などさまざまな印鑑を取り揃えており、オーダーメイドでの印鑑作りにも対応してもらえると思います。