消耗品とは?備品との違いや会計処理方法について解説

消耗品とは?備品との違いや会計処理方法について解説

公開日:2023.2.22 最終更新日:2024.11.2

個人事業主や会社で経理を担当する人が困りがちな勘定科目の選択。中でも消耗品と備品のふたつは似ていて、どちらを選ぶべきか悩む人は多いのではないでしょうか?

しかし2つの勘定科目には明確な定めがあり、どちらでも良いというわけではありません。

さらに迷ったときについつい雑費で処理してしまうという人も多いと思います。とはいえ、何でもかんでも雑費で処理するのは、税務上リスクが高くなるのでおすすめしません。

また会社の支出を明確に把握しておくためにも、勘定科目は正しく処理しておきましょう。

消耗品とは?

国税庁のサイト内では、消耗品について以下のように定義しています。

消耗品費

    • 帳簿、文房具、用紙、包装紙などの消耗品購入費
    • 使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費

引用:国税庁「消耗品費

つまり購入金額が10万円以内で、1年以内に消耗してしまうものは消耗品に該当するというわけです。

消耗品に該当するもの

消耗品に該当するものについて、もう少し詳しく解説していきます。

消耗品費は事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料などに細かく分類できます。共通認識としては先にも解説したように短期間で消耗してしまうものです。
文具はもちろんのこと、コピー機の付属品やトイレットペーパーなどの日用品、オフィスで使うデスクや椅子も消耗品に該当します。電化製品類も10万円以下であれば消耗品で計上可能です。
他にもガソリンや灯油などのように使用すると減っていくものは消耗品になります。ただ勘定科目の選択はある程度企業の裁量に委ねられていて、ガソリンの場合「燃料費」や「車両費」「旅費交通費」で計上している企業もあります。

税務署「帳簿の記帳のしかた」29ページ参照  kichou03.pdf (nta.go.jp)

備品との違いは?

消耗品と判断を迷うのが備品項目です。

前項で紹介した消耗品の基準(使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満)に満たない消耗する物品の多くは、資産の備品に計上します。

備品の定義は、10万円以上か耐用年数が1年以上のものです。

たとえば、パソコンやエアコンなどの家電、機器などです。それぞれに耐用年数が定められていて、基本的にはその耐用年数に従って減価償却で経費に計上します。

備品の減価償却方法など会計処理については次の項で解説しています。

消耗品の会計処理方法

消耗品は購入して年度内にすべて消費するのであれば、購入時に消耗品費で会計処理して完了です。しかし、まとめて購入し年度内で消費しきれなかった場合は、貯蔵品として計上しなくてはいけません。

その際の消耗品の会計処理方法には2通りあります。

コピー機のインクカートリッジを現金で10,000円分購入し、6,000円分だけ使用した際の処理を確認してみましょう。

①一旦資産として計上し、決算時に消耗品で処理

〈購入時〉

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貯蔵品 10,000 現金 10,000

〈決算時〉

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 6,000 貯蔵品 6,000

②先に消耗品として処理し、使用しなかった分を決算時に資産へ振替

〈購入時〉

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 10,000 現金 10,000

〈決算時〉

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貯蔵品 4,000 消耗品費 4,000

どちらの方法で処理をしても6,000円分は消耗品として経費に、使わなかった4,000円分は貯蔵品として資産へ計上できます。

備品の会計処理方法

備品の会計処理は少し複雑です。先にも触れたように、備品に該当するものは器具や備品によって耐久年数が異なります。国が定めた年数で計算し、減価償却の処理をしなくてはいけません。

耐久年数は国税庁のサイトから確認できます。

【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(器具・備品)(その1) (nta.go.jp)

では、30万円のパソコンをクレジットカードで購入した際の処理を確認してみましょう。

減価償却方法には毎年一定の金額で償却する「定額法」と、毎年異なる金額を計上する「定率法」があります。

定額法で会計処理する場合は以下のように、まず資産に計上し、決算時に減価償却処理を行います。パソコンの耐久年数は4年なので、4年間毎年75,000円を減価償却費で計上します。

〈購入時〉

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
器具備品 300,000 未払金 300,000

〈決算時〉

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 75,000 器具備品 75,000

もし年度の途中に備品購入した場合は月割で減価償却します。たとえば12月が決算月で4月購入なら、初年度は9か月分の56,250円を減価償却費に充てられます。

定率法は、未償却残高×定率法の償却率で計算します。定率法のほうが初年度に一番多くの減価償却費を計上できるので、初年度で経費を使いたい人に向いています。定率法のデメリットは定額法より計算式が複雑な点です。

定率法についての詳細は、こちら

尚、定率法の減価償却方法を希望する場合には税務署へ「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要です。届け出なしなら自動的に定額法になります。定額法を希望する場合は特に手続きは必要ありません。

なお、10万円以上20万円未満の減価償却資産は「一括償却資産」として計上できます。20万円以上30万円未満の場合で諸条件に該当していれば「少額減価償却資産」の特例を受けることができ、全額をまとめて減価償却費として経費にすることが可能です。

参考サイト:確定申告、業務の流れ(個人) 購入したパソコンが30万円未満の少額減価償却資産に該当する場合の仕訳は?

雑費の勘定科目を使うときのポイントと注意点

会計処理で注意が必要なのが、雑費の勘定科目の使用方法です。

雑費が多いと、税務署から使途不明金として疑われる可能性が高くなります。
国税庁が掲げる「雑費」の定義は「事業上の費用で他の経費に当てはまらない経費」で、経費全体の5〜10%に抑えるのが理想です。

勘定科目の選択に迷ったときはとりあえず雑費にするのではなく、所得税の青色申告書や収支内訳書に記載の勘定科目(荷造運賃や広告宣伝費など)に該当しないか確認しましょう。

まとめ

消耗品と備品の違いは、使用可能年数と取得価額の違いです。使用可能年数が1年未満か、取得価額が10万円未満のものは消耗品に該当します。

2つに共通するのは、使用消耗した部分のみを経費として上げられる点です。消耗品は大量購入して決算時に在庫として残っている分は貯蔵品に振り替えて資産計上します。備品は器具備品として資産計上しますが、使用した部分は減価償却処理し、経費にできます。

備品の処理は減価償却期間が器具や備品によって異なるため、消耗品にくらべて少し複雑です。ただ、20万円未満のものであれば3年間均等に経費化する「一括償却資産」として計上できるので、購入する際には金額を少し気にかけて選ぶようにするのも良いでしょう。

判断に迷いがちな消耗品と備品ですが、明確な線引きがあります。迷ったときは国税庁のサイトでチェックしてください。