公開日:2023.7.20 最終更新日:2024.11.1
会社の設立時には、やるべきことがたくさんあります。細かい事務作業や決めておくこと、用意するものなど一つひとつリストアップして押さえておかなければなりません。今回は会社を設立するときにやるべきことについて紹介します。
会社設立前に決定しておくべきこと
会社を設立するには登記が必要です。登記を行うためには会社の定款を作成しなければなりません。そのために、事前にさまざまな設立事項を決定する必要があります。ここでは、会社設立前に決めておくべきことについて紹介します。
会社名(商号)を決める
会社設立のためには、まず会社名が必要です。会社名は基本的に自由につけることができますが、見た人に誤解を与える会社名や有名企業と同じ会社名などは避けましょう。
例えば運送業ではないのに◯◯運送などという会社名にすることはできません。また、有名企業と同名だと詐欺と疑われるおそれもあるので注意が必要です。
本店所在地を決める
会社名を決めたら次は本店所在地を決めましょう。本店所在地は、自宅や賃貸オフィスなどに設定することが多いです。バーチャルオフィスやコワーキングスペースも本店所在地として認められることもあります。
コワーキングスペースの中には、住所を使わせてもらえないところもあるので、注意が必要です。
会社設立日を決める
会社設立日は始まりの日なので大切にする人が多いです。会社設立日は登記申請をした日になるので、とくにこだわりがない場合は自分が好きな日に法務局を訪れて構いません。しかし、登記を申請する法務局の業務外の日は登記申請ができないので、土日祝は不可です。
事業年度を決める
事業年度は、会社の決算を行う対象となる1年の区切りのことです。例えば決算月を3月と決めれば、事業年度は4月〜翌年3月の1年間となります。事業年度は自由に決められますので、都合の良い月から始めましょう。
事業目的を決める
事業目的を決めることは、会社設立にとって大切なことです。定款の事業目的に記載のない事業は行うことができないため、今後展開する可能性のある事業は、あらかじめ入れておくと良いでしょう。
資本金の金額を決める
次は資本金の金額を決めましょう。資本金は、初期投資及び半年分の運転資金を資本金として計上している会社が多いようです。
必要な資本金は1円以上と会社法で定められていますが、設立したばかりの会社の資本金は信用力に直結するので、極端に低いと融資などが受けられない可能性があります。融資を受けることを考えている場合は、相応の資本金を入れましょう。
発起人を決める
発起人は必ず定款に書かなければなりません。発起人とは会社を設立する人のことです。発起人の人数は定められておらず、個人だけでなく法人でもなることができます。
出資財産(現金・現物出資)を決める
出資財産も設立前に決めておきましょう。出資金は現金で準備するのが一般的ですが、現物による出資も可能です。現物の場合は、不動産や車、PCなど資産価値のあるものを出します。知的財産などの無形資産でも問題ありません。
発行可能株式総数を決める
発行可能株式総数は、会社設立後の資金調達を視野に入れ、高い上限の株式総数を決めることが可能です。定款に定めた発行可能株式総数を超えた株式を発行したい場合は、定款自体を変更する必要があるため、多めに設定しておくと良いでしょう。
役員構成を決める
役員構成を決めるのも会社設立には欠かせないことです。代表取締役、取締役、監査役などを決めましょう。
代表取締役は、取締役の中から決めなければなりません。取締役会がない会社は代表取締役を選出しないこともできます。定款に代表取締役を記載している場合、代表取締役を変更するときは、定款の変更も必要です。
取締役は、株式会社なら最低1人、取締役会を置く会社は最低3人選出しなければなりません。
監査役は、取締役会の監査と会計の監査が仕事です。監査役は、会社の種類によって設置しなくても良いケースもあるので注意しましょう。
取締役会を設置するか決める
株式譲渡制限会社に該当するときは取締役1人でも会社設立ができます。しかし、前述のとおり、取締役会を置くときは、3人以上の取締役と1人以上監査役の選任が必要です。取締役会を設置するかどうかも決めなければなりません。
取締役や監査役の任期を決める
取締役と監査役を置くことを決めた後は、任期を決める必要があります。取締役は原則2年、監査役は原則4年が任期となっているので、定款に記載しましょう。
登記手続きに必要なこと
定款に記載する内容が決まったら、次は登記申請手続きが必要です。登記のためにはさまざまな手続きが必要なので、漏れがないように進めましょう。
法人用の実印を作成する
法人にはさまざまな場面で印鑑が必要なので、まずは印鑑を作りましょう。法人の実印はもちろん必要ですが、ほかにも、銀行印、社印、ゴム印(社名や所在地、電話番号、代表者名などが入った物)も同時に作るのがおすすめです。
必要な印鑑を一気に作ってしまった方が、二度手間にならないので、設立前に段取りをしておきましょう。
印鑑証明書を取得する
印鑑証明書の取得も必要です。発起人の分だけでなく、会社設立時の取締役全員分が必要となります。ただし、取締役会を置くと決めた場合には、代表取締役の印鑑証明のみでOKです。
定款を作成し、認証を受ける
会社の基本の規則となる定款は、公証役場で認証をしてもらう必要があります。公証役場で認証の手続きをすると、5万円の認証費用と1枚あたり250円の手数料が必要です。
出資金(資本金)を払い込む
ここまで終わったら、最初に決めた出資金を銀行口座に振り込みましょう。振り込んだら「払込証明書」を作成し、法人実印を押しておきます。
登記申請書類を作成し、法務局で申請する
最後は登記申請を行います。登記の申請に必要な書類は下記のとおりです。
・設立登記申請書
法務局のサイトから様式がダウンロードできます。
・定款(謄本)
謄本は1部用意すればOKです。
・登録免許税納付用台紙
登録免許税の印紙を貼る台紙のことです。登録免許税は、15万円または資本金額に×0.7%をかけた費用のいずれか高い方の金額となります。金額分の収入印紙を購入し、この台紙に貼り付けて提出しましょう。
・発起人決定書(発起人議事録)
発起人が、会社名や目的、本店の所在地などを決定したことを明記した書類です。
・代表取締役の就任承諾書
代表取締役への就任を承諾したことを示す書類です。取締役が1名かつ代表を兼務している場合は必要ありません。
・取締役の就任承諾書
・監査役の就任承諾書
取締役と監査役に就任することを承諾したことを示す書類です。
・取締役の印鑑証明書
取締役全員の印鑑証明書、もしくは取締役会を置く場合は代表取締役のみの印鑑証明書です。
・印鑑届書
法人実印の届け出を行う書類です。
・出資金の払込証明書
払込証明書は、振り込んだ通帳の表紙と裏表紙、払い込んだことがわかるページのコピーに、法人実印を押した払込証明書の表紙をつけて製本した書類です。表紙には、払い込んだ金額や株式発行数、本店所在地、会社名などを記載します。
上記の書類を揃えて法務局に提出しましょう。
会社設立後にすべきこと
会社の登記が終わっても、まだすべきことはたくさんあります。漏れがないように滞りなく行いましょう。
法務局で証明書を取得
登記事項証明書や印鑑証明書は、口座開設や年金事務所への届け出の際に必要なので、設立後になるべく早く取得しておきましょう。印鑑証明書発行には印鑑カードが必要です。忘れずに持って行きましょう。
銀行で法人口座開設
取引に必要な銀行口座の開設もいち早く行いましょう。法人口座は審査基準が厳しく、開設に時間が掛かるため、早めに準備をするのがおすすめです。
年金事務所への届け出
年金事務所への届け出は、会社設立から5日以内とされています。意外に時間がないので急いで届け出ましょう。
ハローワークへの届け出
従業員を雇用する場合はハローワークへの届け出も必要です。従業員を雇用した翌日から10日以内に手続きしましょう。
労働基準監督署への届け出
従業員を雇用する場合は労働基準監督署への届け出もしなければなりません。届け出の期限は従業員を雇用した翌日から10〜50日以内です。忘れないように、ハローワークへの届け出と同時に行うと良いでしょう。
税務署への届け出
税務署への届け出は、会社設立から1~3ヶ月以内です。法人税の申告などにも関連するため、早めに届け出ましょう。
都道府県税事務所への届け出
地域によって届け出の様式や期限が違う場合があるので注意が必要です。
市町村役場への届け出
市町村役場への届け出も地域によって異なります。まず市町村役場に提出義務があるかどうか確認してみましょう。
まとめ
会社設立は、決めることや官公庁に出す膨大な書類が必要となります。ひとつでも漏れていると、法令違反になったり、法務局で受け付けてもらえず希望の設立日がずれてしまったりする可能性も否定できません。設立時にはやることリストを作成して抜け目なく行いましょう。