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あなたの知らない回転印の世界!基礎知識からオリジナル製作の秘訣公開

あなたの知らない回転印の世界!基礎知識からオリジナル製作の秘訣公開

公開日:2022.6.2 最終更新日:2025.10.10 回転印をご存知でしょうか?文字通り、印字部(印面)を回転させて使うスタンプです。   何を今更とお思いの方も多いかと思いますが、実は奥が深いアイテムだったのです。知れば納得! 回転印の世界について解説していきたいと思います。   回転印の基本   回転印は文字駒が連なったベルト状の「帯」があり、その文字駒を印字するため整列させる台となる「橋」が必要です。帯を一駒毎に回転させる「歯車」と、それを維持固定するための「芯棒」、これらすべてを保持する「胴」が基本構造となります。 更に、手に持って使用しやすいようにする「柄」や、芯棒が抜け落ちないように両端をカバーする「カブセ」が付いています。 ひとことに回転印と言っても、数字のコードや日付など用途に応じて「帯」の本数が様々な種類が存在します。「帯の本数」のことを『連(れん)』と呼びます。一般的な日付回転印は【年・年・月・日・日】という5本の帯で構成されています。このような場合、「5連」といいます。   また、文字サイズも用途に応じていろいろあります。書類に使用するに当たり、文字の高さが5mmほどの「3号」日付印がよく使われています。ダンボールの側面に大きく表記するために文字高さ16mmほどの「特大号」なども見かけます。   上記で例に出しました「文字の高さが5mmほど、5本帯の日付回転印」の事は「3号5連 日付印」という呼称になります。   帯ゴムについて   回転印の帯に使用するゴムにも用途に応じて選択することができます。通常の紙面に使用するなら「赤色」や「緑色」のゴムをおすすめします。連続捺印をするなら「浸透ゴム」を選択することもできます。プラスチックやガラスなど非吸収面用に対応した多用途インクを使用する場合は、「耐油ゴム(黒色)」を選択してください。「赤色」や「緑色」のゴムで多用途インクを使用するとインクの溶剤に冒されて膨潤や破損が生じる恐れがあります。   帯のゴム色が異なることで、見た目も大きく変化します。最適なゴムを選んでくださいね。   また、それぞれの帯を「橋」の上に整列したときに高さがバラバラだと均一でキレイな印影を得ることができません。リング状になった全ての帯に対して、どの文字駒でも高さが均一に揃えて製造する必要があります。簡単そうに思えるかもしれませんが、熟練の技術が必要で回転印の重要な要素のひとつになります。 回転印の種類について   回転印、どのくらいの種類があるのでしょうか? 一般的な既製回転印の種類と用途をご紹介していきたいと思います。   日付印   普段の生活でもよく目にすることができる【年.月.日】がスタンプできる回転印です。一般的には【年・年・月・日・日】の5連で構成されていますが、【年】が1連で『2022.』のように帯幅が広い4連日付も人気です。 飛日付   帯構成は上記日付印と大きく変わりはないのですが、【  年  月  日】と既に印刷されている小切手や手形などの用紙に対応するため文字駒の間隔が広く取られた回転印です。回転印の文字サイズによって空白部のサイズも変わりますので、使用目的の用紙に適した飛日付を選ぶことができます。 和文日付   日付印の文字駒に『令和』や『5月』などが配されており、和暦表記ができる回転印です。寺院などで使用されるすべて漢字で表記する和文日付という商品もあります。 欧文連物   ナンバーリングや金額など数字が並んだ表記が複数並んだ表示ができる回転印です。数字帯の並びは4連・6連・8連・10連・12連と多くのラインナップがあり、用途に応じて選択することができます。また、使用しない箇所を「空白駒」にすることで3連や7連のような印字もできます。簡易の飛日付のような使い方も可能です。 特殊連物   いままでご紹介してきた回転印の文字は、数字がメインでした。特殊連物は、数字以外の文字が入った回転印になります。例えば、アルファベット26字が1本の帯に入った「英欧文」や、紡績の原材料名と配合率を押印できる「紡績用」などがあります。 別製回転印について   このような回転印ですが、どのくらいの種類があるのでしょうか?答えはありません…無限に存在します。欲しい回転印が見つからなければ、特注で1個から製作することができるからです!   既製回転印の文字列に少しだけ変更を加えたい、完全にオリジナルの回転印を新たにデザインすることも可能です。製造番号の捺印、物品の管理、日付や記号を組み合わせたものなど、用途に合わせて製作することができます。その一例をご案内させていただきます。   製作可能な 文字サイズ/書体/帯本数   回転印の別製・オーダーメイドとして一番多いのが、帯内容を使用シーンに合わせて変更する内容です。一つ一つ熟練の職人の手により製作しているので、帯一本の幅や内容も自由に指定できます。 それぞれの帯ごとに文字数の上限は特にありません。文字のサイズ、書体・フォントも多くの選択肢から選択することが可能です。 帯の幅が長くなると、歯車の回転だけでは変更することが困難になる場合があります。そのような場合は、胴の外部に『蝶ネジ』を出して操作しやすくすることも可能です。 多段式   食品の外装に「製造日」と「賞味期限日」など別々の日付を繰り返し押印する必要がある場合…どうしましょう? 日付回転印を2個用意して都度持ち直して押印する方法もありますが、複数個の回転印を1つにまとめることも可能です! また、回転印とは別にゴム印をセットにした構成も可能です。 「住所印」と「回転印」を合わせたり、コード印の「固定部」をゴム印にして「変更部」を回転印にするといった構成もできます。 二段/三段式の回転印では、上下の列に帯が回転するための隙間が必要になります。この隙間を狭めることはできません。どうしても間隔を小さくしたい場合、「差込スタンプ」併用することで隙間を狭くすることができます。「差込スタンプ」とは、やや厚みのある「差込駒」をピンセット等でつまんで専用の溝に差し入れて使用するゴム印です。歯車構造などが不要なため省スペースで可変式のゴム印を用意することができます。 ストッパー   回転印を連続で使用すると捺印時の振動で微妙なズレを生じることがあります。また、意図せず歯車に触れて印字内容が変わることも考えられます。このようなことが起きないように帯を固定する「ストッパー」を設置することができます。印字部に近い箇所の帯全体を覆うようにホールドすることで、帯が不用意に動くことができなくなるので安心して使用することができるようになります。 乙式   シンプルな回転印以外にも、データー印型で固定印字部と合わせた別製品も製作可能です。固定印字部を貼付した印面枠はヒンジ式になっており、オープンした状態で回転印の帯を変更させることができます。この開閉時のツマミ部が『乙』の字形に似ていることから「乙式」と呼ばれていると思われます。 別製データー   データー印も別製品が製作できます。回転印同様に帯の内容が自由に変更できます。通常の日付印は固定印字面の中央に窓があり日付部が入るデザインですが、窓位置も自由に設定できます。   別製品というだけあって、本当に多くの仕様を選択することができます。   どのような仕様が最適なのか? 特に初めて別製品を作るときは特にわからないことだらけだと思います。 そんなときは、サンビーのオリジナルスタンプ工房にお問い合わせください!「こんなデザインの回転印はできますか?」と希望を伝えれば、専門スタッフが最適な仕様を提案し、お見積もりから製作までをサポートいたします。   あなたの現場に最適な回転印を作ってみてはいかがですか? 別製回転印 - スピード対応!【オリジナルスタンプ工房・制作・製造】-サンビー 合わせて読みたい データ印ならサンビー!シンプルから可愛いまで種類豊富なアイテムから選べる

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シャチハタ印とは

シャチハタ印とは

公開日:2022.5.23 最終更新日:2024.11.2 書類に氏名を記入したら、横に印を押す箇所があり「シャチハタ印不可」との注意書きがありました…。使用している自分の印鑑が『シャチハタ印』なの!?と悩まれた方も多いのではないでしょうか? 印鑑の違いをしっかり説明できる人はどれくらいいるでしょうか?ここでは何を『シャチハタ印』と呼ぶのか、解説していきます。 シャチハタ印とは 「シャチハタ印」とは何でしょうか?そう質問されると、「スタンプ台や朱肉を使わずにポンポン連続して押せるハンコ・スタンプ」と答える人が多いのではないでしょうか?それ、半分正解で半分間違いです。そもそも「シャチハタ印」という商品は存在していません。 「スタンプ台や朱肉を使わずにポンポン連続して押せるハンコ・スタンプ」は何!? 正しくは「インク浸透印」と呼びます。これは1970年に開催された日本万国博覧会(70年大阪万博)のスタンプラリーで「シヤチハタ株式会社」が開発した製品が使用され、その結果、全国に広まったからだと言われています。そのとき「シヤチハタ株式会社が作ったインク浸透印」が「シャチハタ印」となったわけですね。 takato marui - originally posted to Flickr as Korean Pavilion, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10114600による ちなみにシヤチハタ株式会社の「ヤ」は小文字表記ではありません。 このことを踏まえて「シャチハタ印(浸透印)」と印鑑の違いを解説する前に、一般的な「シャチハタ印(浸透印)」の製造方法を確認したいと思います。 どうやって作っているの? 「シャチハタ印(浸透印)」はスタンプ台や朱肉を使わずにポンポン連続して押せるという大きな特徴を持っています。ではこのような特徴はどのようにして得られるのか確認していきたいと思います。 塩が肝心! 「シャチハタ印(浸透印)」の秘密は文字部である「印面」部にあります。この印面部は軟質のゴムが主な素材ですが、超微細な穴がつながった連泡体になっています。この超微細な穴によってインクが、毛細管現象を利用して留まっているため連続でポンポン押せる特徴が得られています。 ではこの「超微細スポンジ体」をどのように作り出しているのか?その最大の立役者は意外にも「塩」なのです。塩を「つぶつぶ感」がまったくない超微細サイズにまで粉砕してゴムに混ぜたベース材を作製します。そのベース材をプレス加工やレーザー加工でハンコ部を成形・熱湯で塩を溶かすことで「超微細スポンジ体」が出来上がります。 古くはアメリカで発見された特許技術を、シヤチハタ株式会社が日本国内で初めて商品化したことも言われています。 シャチハタ印と印鑑の違い このように作られるシャチハタ印と一般的な印鑑、どのような違いがあるのでしょうか? 硬い印鑑、柔らかいシャチハタ印 微細スポンジ体であるシャチハタ印は「インク浸透印」の文字通り、文字部が紙面に押しつぶされることで内部のインクを吐出します。そのため厳密に見ると毎回捺印される字形(印影)が異なります。 一方、「印鑑」は木材や金属材を彫刻加工して文字部を製作していますので、毎回同じ印影を得ることができます。 近年では加工技術や使用インクの改善などでシャチハタ印も鮮明な印影が得られるようになっていますが、この違いが印鑑証明に使用可・使用不可の判断に繋がっています。 合わせて読みたい 認印とシャチハタの違いは?シャチハタ使用不可となる場面を解説 見落としがち!?インク補充方法 インクを含浸してキレイに捺印できるシャチハタ印ですが、インクが不足すると鮮明な印影を得ることができなくなります。 メーカーによると、半日(12時間)ほど放置した後、はじめて捺印した印影が極端に薄いと感じたときにインクを補充するようにアナウンスされています。 これは、一度に連続してポンポン捺印すると文字部表面のインクが瞬間的に薄くなります。しばらく時間が経過すると印面ゴム内部からインクが染み出してきて回復することがあるため、本当にインクが枯渇しているのか確認する目的で「半日(12時間)ほど放置」するようにアナウンスされています。 表から と 裏から インクを補充する方法として2タイプのグループに分かれます。「ゴム印面の文字部が加工されている表面に直接インクを供給する方法」と「ゴム印面の裏側からインクを補充する方法」です。双方にメリット・デメリットがあります。可能なら購入前に補充方法はどのタイプなのかを確認してみてください。 ゴム印面の文字部が加工されている表面に直接インクを供給する方法 文字部を上にしてゴム印面にインクを1〜2滴補充してインクが馴染むまで放置します。 インクが印面内部に浸透していくまで安定な場所に放置しておく必要があり、インクが浸透していく状況を目視確認することができます。当然ながら含侵直後では捺印することができませんが、印影回復までの時間が短いのが特徴です。 ゴム印面の裏側からインクを補充する方法 製品の持ち手(柄)を外して、印面裏部からカートリッジやインクを直接補充する方法になります。インクが文字部表面にまで行き渡るまでの回復時間が必要で5〜6時間ほどかかる場合もあります。一方、補充したインクが逆流しないように製品を横倒しにしなければ補充後でも製品を使用し続けることが可能です。 双方ともインクを直接補充した場合、補充したインクが漏れ出さないように注意する必要があります。 合わせて読みたい インクを補充しても薄い!補充する時のコツや解決方法を解説 意外な落とし穴…メンテナンス方法 便利な「シャチハタ印・インク浸透印」ですが、当然ながらメンテナンスを行わないと最悪の場合、使用不可能な状態に陥ることがあります。 ・文字部にホコリの膜が… キャップをしていても、捺印する紙面の「紙粉」や周りを漂う「ホコリ」がインクで濡れた文字部に付着していきます。意外な物で印刷物の「インク・トナー粉」や、印紙や封印に使用した「未乾燥の糊」が付着して硬化して積層していくことがあります。インクを吐出するシャチハタ印ですので、ホコリなどの被膜で覆われると鮮明な印影を得ることができなくなります。製品の取扱説明書に明記されているように先端が柔らかい綿棒などでふき取るなどしてクリーニングを行う必要があります。 ・浸透印もゴムだから… 脆くなって砕けてしまった古い輪ゴムを見たことがあるかと思います。シャチハタ印の印面部も合成ゴムなどを主原料としています。そのため、真夏の高温になった車中や部屋、真冬の極寒状態に放置などするとゴムの安定性が崩れて固く硬化したり文字部が脆くなるなど不良化することもあります。 ・専用インクを補充して! 「シャチハタ印・インク浸透印」を製造販売しているメーカーは シヤチハタ株式会社 以外にも、サンビー株式会社や谷川商事株式会社、株式会社タイヨートマーなど多くメーカーがあります。 それぞれのメーカーごとにインクの特性や成分が異なるので、ご使用の商品に適した「専用インク」を使用して補充しないといけません。同じメーカーでも商品ごとに特製の異なるインクを展開している場合もあります。ご使用されている商品に適したインクを付属している「取扱説明書」や、各社webサイトなどに掲載されている「インク補充の案内コーナー」をしっかり確認して補充するようにしてください。 このように取り扱いに注意頂くことで鮮明な捺印を継続して使用できる「心強い相棒」になってくれます。

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印鑑の歴史

印鑑の歴史

公開日:2022.5.23 最終更新日:2024.11.2 日本は印章文化だと言われていますが、「印鑑」はいつからあるのかご存知でしょうか?改めて印鑑の歴史を見ていきたいと思います。 印鑑とハンコ 印鑑の歴史を始める前に、印鑑とは何かということを確認したいと思います。  印章:いわゆるハンコの本体のことです。木やプラスチック、金属などでできています。  印影:ハンコを押した結果、紙におされる模様のことです。  印鑑:ハンコを押した結果、紙に残る印・模様。 印影をまとめた一覧の名簿。 ハンコ本体のことを印鑑と呼ぶことがありますが、本来の意味では間違っています。ですがここでは分かりやすいように、一般的なハンコ本体のことを「印鑑」と呼んで説明していくことにします。 印鑑の起源 印鑑の歴史は非常に古く、6千年にもおよぶと言われています。発祥は紀元前四千年前、世界で最初の文明であるメソポタミア文明とされています。 権力者しか持つことが許されなかった 当時の印鑑は、石や骨など円筒形の外周に絵や文字を刻んで、粒土の上で転がして使用するものであったと考えられています。 このような印鑑を紐に通して首からかけて身につけていたようです。書簡を封印する際に使用する目的から、高い地位を示す権力の象徴であったとも言われています。 中国で印鑑制度確立 印鑑はやがてエジプト文明、インダス文明、中国文明など世界各地へ広がっていきます。西は、ギリシア・ローマを経て欧州各地に影響を与えましたが、欧州では印鑑を押すという制度も習慣もほとんど残されませんでした。 一方、東の中国へ伝播したのは約2,200年前、奏の時代になります。中国の統一を果たした始皇帝が、官印の制度(印章制度)を定め、大きく発展を遂げました。その時に文字の統一も行われ、今でも印鑑などに使用される「篆書体(てんしょたい)」の基本ができました。 中国から日本へ 漢の時代に更に印鑑が盛んになり、皇帝から官史や将軍に信頼や統治の証として印鑑が授けられるようになります。福岡県志賀島で出土した「漢委奴国王」の金印(国宝)も、同様に贈られたものになります。 日本での印鑑 日本での印鑑の文化がいつ頃から印鑑が使われ始めたのか、明確な資料が無いのですが、最初から広まった訳ではなく一部の権力者のみが使うという文化であり、一般庶民は印鑑を持つことさえ出来なかったと考えられています。 日本史でおなじみの… 日本に存在する最古の印は先程ご紹介しました「漢委奴国王」の金印といわれています。5世紀前半に中国で書かれた「後漢書東夷伝」の中に、後漢の光武帝が、紀元57年に、倭の奴国に印綬(役人の身分を証明する印と、それを身につけるための組み紐)を授けたことが書かれています。 日本で印鑑制度が整備されたのは、大宝元年(701年) 奈良時代に中国(唐)の方式を基準として制定された「大宝律令」からと言われています。支配者の公の印としてのみに政府や地方で使用されて、個人で製造・使用することは禁じられていました。 平安時代になると貴族も個人の印鑑を使用することが許されるようになります。鎌倉時代には中国(宋)との貿易によりいろいろな文化が導入される中、僧侶などが書画に使用するための「落款印(らっかんいん)」なども流行していきます。 いまも作品に使用されている落款印 戦国時代に入ると、武将たちがそれぞれ権力と威厳を表現するため趣向を凝らした私印を用いるようになります。織田信長の「天下布武」印、上杉謙信の「地帝妙」印、豊臣秀吉の「豊臣」印などが知られています。 約四百年前にポルトガル人が渡来し、鉄砲といっしょに印章篆刻技術が伝わったともいわれています。南蛮品を好んだことで知られる織田信長は全国から100名の職人を集めポルトガル人講師の下で講習させて特別優秀な三名に「細字(さいじ)」の姓を与え、帯刀を許したのがわが国「印章師」の発祥であるといわれています。 江戸時代には商業や貨幣の発達に伴い、帳簿類の整備が進み、印鑑の使用が習慣化して庶民に普及していきます。 1873(明治6)年10月1日、「本人が自書して実印を押すべし。自書の出来ない者は代筆させても良いが本人の実印を押すべし。」と太政官布告にて公式の書類に署名と実印を押すよう制度を定められました。これが、現在の印鑑登録制度が導入されるきっかけとなりました。 また、このことを記念して毎年10月1日は「印章の日」と定められて全国で記念行事などが行われています。 世界の印鑑 今日、印鑑を使う国は世界にどれほどあるのでしょうか? 欧米 アメリカ・ヨーロッパはサイン文化であり、印鑑を使うことはほぼありません。印鑑の発祥・メソポタミアで使われていたように、書簡を封印するための「シーリングスタンプ」が残る程度です。 一方、東のアジア地域はどうでしょうか? 印鑑の文化は中国から日本に伝わりましたが、中国では印鑑制度は存在していません。中国では、落款印などの趣味の印鑑として楽しまれていますが、印鑑を押す習慣は無くサイン証明の制度がとられています。1914年に韓国が日本の印鑑制度を導入しました。同様に1906年に台湾でも導入されています。 日本に旅行に来られた海外の方が、記念やお土産に印鑑を購入されるということもあるようです。 印を捺す意味 とは スケールの大きな話になりましたが、大切なシーンで使用するという意味では変わりないことを再確認できたと思います。最後に「印を捺す」という意味を改めて考えてみたいと思います。 多くの方が思い浮かべるのが「この文章を私は承認しました」という『本人確認』のためではないでしょうか? 実はこれは不正解です。正解は『意思の担保』になります。すなわち、押印した書類の内容を承認した証拠(担保)として相手に差し出すことを目的に捺すのです。相手に渡さなければ意味を成さないもの なのです。 6,000年も前のメソポタミアで発祥した印鑑。高い地位の権力者しか持つことを許されなかった印鑑。 現在のわたしたちが捺す印鑑について、改めて思いを巡らすきっかけになれば幸いです。

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印鑑と印章っておなじなの?

印鑑と印章っておなじなの?

公開日:2022.5.23 最終更新日:2024.11.2 印鑑と印章って同じ意味として使っていないでしょうか? 実は、それ間違いです。違いについて改めて解説してみたいと思います。 印鑑の歴史 印鑑の歴史は非常に古く、6千年にもおよぶと言われています。発祥は紀元前四千年前、世界で最初の文明であるメソポタミア文明とされています。当時の印鑑は、石や骨など円筒形の外周に絵や文字を刻んで、粒土の上で転がして使用するものであったと考えられています。このような印鑑を紐に通して首からかけて身につけていたようです。書簡を封印する際に使用する目的から、高い地位を示す権力の象徴であったとも言われています。 やがてエジプト文明、インダス文明など世界各地へ広がっていきます。 日本に存在する最古の印は福岡県志賀島で出土した「漢委奴国王」の金印(国宝)といわれています。5世紀前半に中国で書かれた「後漢書東夷伝」の中に、後漢の光武帝が、紀元57年に、倭の奴国に印綬(役人の身分を証明する印と、それを身につけるための組み紐)を授けたことが書かれています。 奈良時代に中国(唐)の方式を基準として制定された「大宝律令」にて、支配者の公の印としてのみに政府や地方で使用されました。しかし個人で製造・使用することは禁じられていました。 平安時代になると貴族も個人の印鑑を使用することが許されるようになり、戦国時代に入ると武将たちがそれぞれ権力と威厳を表現するため趣向を凝らした私印を用いるようになります。織田信長の「天下布武」印、上杉謙信の「地帝妙」印、豊臣秀吉の「豊臣」印などが知られています。 江戸時代には商業や貨幣の発達に伴い、帳簿類の整備が進み、印鑑の使用が習慣化して庶民に普及していきます。 1873(明治6)年10月1日、「本人が自書して実印を押すべし。自書の出来ない者は代筆させても良いが本人の実印を押すべし。」と太政官布告にて公式の書類に署名と実印を押すよう制度を定められました。これが、現在の印鑑登録制度が導入されるきっかけとなりました。 印鑑と印章 このような歴史の印鑑ですが、現在よく耳にする「印鑑」「印影」「印章」「ハンコ」を説明できますでしょうか? 印章:いわゆる「ハンコ」の本体のことです。   木やプラスチック、金属などでできています。   手で持って捺す「ハンコ」そのものを指します。 印鑑:ハンコを押した結果、紙に残る印・模様のこと。   すなわち「印影」を指します。 改めて「印鑑」の「鑑」を辞書で調べてみると、以下のように書かれていました。  鏡。物の形をうつすもの。てほん。いましめ。  鏡に照らしてみる。真の姿を考えみる。見きわめる。 「物の形をうつすもの。」という意味からも「印鑑」の意味が汲み取れます。また「印鑑」には、どの印影が誰のものか分かるようにするためにまとめた『印影の一覧名簿』の意味もあります。 ハンコの本体のことを印鑑と解釈して「印鑑を持ってきてください」などと言うことがありますが、実は間違っています。正確に言うならば「印章を持ってきてください」と言うべきですね。 分かりやすいようにこの一般的には、ハンコ本体のことを「印鑑」と呼んでいるのが現状です。 「印鑑を持ってきてくださいね」と言われたとき、「印章ですね」とスマートに返すことができれば知的さをアピールできるのでは無いでしょうか? 知らんけど・・・ 印鑑の種類 これから、いろいろな印鑑の紹介をしていきたいと思います。 認印 『認印』は、姓(苗字)のみのタイプが多いと思います。用途:認印(みとめいん)として通常の契約書、申込書など正式な文書など木やプラスチックなど硬い素材でできている印鑑です。 特に名前がないため「普通の印鑑」としかいいようがないのですが、特に安いものは三文判と呼ばれます。認印として、個人の方が接する通常の契約書や申込書などに使われることが多いです。日常生活で荷物の受け取りや回覧板「押印してください」と言われたら、ほとんどこのタイプを使うことになるでしょう。 銀行印 『銀行印』というのも聞いたことがあるかと思いますが、これは特別な印鑑ではありません。銀行との間の取引に使う印鑑として、あらかじめ銀行に登録した印鑑のことを銀行印といいます。 預金の引き出しや振込など、その銀行との間の取引においてはこの銀行印を使わなければなりませんが、それ以外で使うことはありません。はんこ屋さんなどでは、三文判よりも少し大きな印鑑を銀行印として作ることもありますが、実印と同じ印鑑でも、三文判でも問題ありません。 法人では、丸印を銀行印として使う例もあります。上記のような形状の分類とは異なり、実印か認印かという分類もあります。 実印と認印の違い 『実印』とは、市町村(個人の場合)または法務局(法人の場合)に登録した印鑑のことをいいます。他方、実印以外の印鑑を一般的に『認印』といいます。 重要なのは、実印として登録したものが実印であるという点です。 どんな簡単な印鑑でも登録すればそれが実印になる一方で、どんな仰々しい印鑑でも登録しなければそれは認印です。なお、法人の場合は登録(届出)が必須ですが、個人の場合には必須ではありません。 実印であることの意味 実印として登録すると、「印鑑登録証明書」(個人)や「印鑑証明書」(法人)によって、その印影が自分のものであることを市役所や法務局が証明してくれます。そして、この印鑑(登録)証明書は本人でないと取れません。(証明書の取得には、個人番号カードや印鑑カードが必要です) そのため、実印を押した文書と証明書がセットになることで、「この文書に押された印鑑は本人のものである」ということの強い証明となり、ひいてはそれが「この文書は本人が記載したものである」ということの強い証明となります。 このように、実印は証明書とセットでなければ意味がないという点にご注意ください。証明書がなければ、扱いは認印を押したのと同じです。 合わせて読みたい 印鑑とハンコの違いとは?印章や印影など関連ワードもまとめて解説

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印材の種類

印材の種類

公開日:2022.5.23 最終更新日:2024.11.2 いざハンコを作ろうとしたら、店員さんに「印材は何にしますか?」と聞かれて戸惑うことがあります。そもそも印材って何?そのあたりから解説してみたいと思います。 印材とは 字面を見るとイメージが付くかと思いますが、「印章」を彫るための「素材」を「印材」と呼びます。古くは動物の骨や石などが使われていました。現在では耐久性が良いとされる「チタン」などの金属や、安くて強度があることで普及したプラスチックなど、いろいろあります。今回は、特に人気のある印材をセレクトして、特徴や印材の作り方などをご説明させていただきます。 本柘 伊豆諸島、鹿児島、東南アジア等に生育する柘植の木を加工して印鑑材料としたものです。年輪が非常に細かく彫刻に適しています。印鑑素材の中で最も安く、広く普及している素材です。 実印や銀行印、認印など広い用途で用いられており、印鑑を買う際に必ず候補に上がるほど有名な印鑑素材です。特に生産地が鹿児島県のものを「薩摩本柘」というブランド物の印鑑です。薩摩本柘は、実印や銀行印さらには法人用印鑑としても人気で、高級品と言われる割には、低めの価格で流通しており、安価で良質な印材として有名です。 黒水牛 東南アジア等で家畜として飼育されている水牛の角から作った真っ黒い印鑑です、一般的な印鑑として広く用いられています。黒さを引き立てる為の染め加工と、ひび割れ防止の為の加工がされている印鑑素材です。自然素材なので1つとして同じ模様の印鑑はありません。 また、黒水牛は耐久性にも優れていてとても丈夫です。特に、角の芯に近い部分は高級品として有名です。ただし、管理には少し注意が必要です。黒水牛の主成分はタンパク質です。そのため、乾燥や虫食いに注意しなければなりません。しっかりとケースにしまって保管するなど、ちゃんとお手入れをしていれば長い間つかうことができる素材です。 さらに、捺印性に優れているのも特徴。黒水牛の印鑑は朱肉のツキが良く、印影がきれいで押しやすい印鑑です。 象牙 アフリカ象の牙を加工して作られた印鑑です。象牙は古くより、装飾品、三味線のバチ、琴のツメ、パイプ、玉突きの玉などに使用されていますが、印鑑の材料としても細かな彫刻に適し、印肉の捺印性が良く、対摩耗性にも優れた印鑑の高級品です。 象牙は、真っ白よりも少し黄色みがかった落ち着きのある色合いで、 控えめな牙の模様がとても味わい深く、使えば使うほど艶が出てきて深みが増します。 牙の部位の中でも、印鑑に使われる部分は耐久性が高く、耐摩耗性にも優れているため、象牙印鑑は印面の欠けや磨り減りが起こりにくいという利点があります。そのため、象牙印鑑は、丁寧に扱えば一生ものとして使える丈夫な印鑑です。象牙が実印などに向いているのは、この優れた耐久性も理由の1つです。 高級素材として有名な象牙印鑑ですが、実は象牙の部位によってランクが分かれています。一般的な象牙印鑑のランクは、中心部分から順に「中心層」、「中皮層」、「外皮層」の3つに分かれます。この中でも最高級品が「中心層」の象牙印鑑。次に、「中皮層」、「外皮層」と続きます。 なぜ、象牙印鑑がこのようにランクが分かれているかというと、部位によって耐久性と希少性が違うためです。基本的に象牙は、中心部に近いものほど、高い繊維密度で目が細かく、密度が高いため丈夫です。さらに、「中心層」の印材は、1本の象牙から1〜2本しか取れず、希少価値があるので、高いランクになっています。 牛角(オランダ水牛) オランダ水牛は、飴色・クリーム色で透明感のあるボディが特徴。なめらかで落ち着いた色合いがとてもおしゃれで、独特の高級感を放っています。実用面でも他の角・牙素材の印鑑と同じような性質を持ちます。 まず、オランダ水牛は耐久性が高いのがポイント。しっかりとケースに入れて保管すれば、長いあいだ使用できる丈夫な印鑑です。また、朱肉のツキがよく、捺印性が高いのも特徴。手になじみやすく、持ちやすいので、きれいな印影がしっかりと押せます。ただし、主成分がタンパク質なので、管理には少し注意が必要です。 乾燥に弱いので、剥き出しのまま、直射日光に当たるところに放置するのはやめましょう。また、虫に狙われるので、タンスなどにしまう際は、防虫剤と一緒に保管するように心がけてください。 琥珀 琥珀は、印鑑素材としてはとても有名な印材。特に女性の方に人気で、実印や銀行印といった大切な印鑑用に購入される方が多くいらっしゃいます。その美しさは太陽の石や人魚の涙などとも呼ばれる程。その美しさの一番の要因は特徴的な黄褐色です。 高級素材として知られており、印鑑の中では本象牙と肩を並べる存在でもあります。一見、鉱物に見える「琥珀」ですが、実は植物から生成される宝石なのです。 樹木の樹脂が長い年月をかけて固化することで美しい琥珀へと変化します。そのため、大量生産できないので、希少価値が非常に高い素材なのです。樹脂が固まる段階で不純物が少なければ少ないほど、透き通った透明感が美しい琥珀ができ上がります。反対に葉や花、古代の昆虫などが固化の段階で混じり、不純物が多い状態になると特徴的な模様が浮かび上がり、色に深みが増します。 このような生成過程の特徴から、世界に同じものが1つとして存在しないことも魅力だと言えるでしょう。主な産地は北ヨーロッパのバルト海沿岸。そのため、ヨーロッパでは古くから宝飾品として人気が高い素材でした。 琥珀の印鑑はまるで宝飾品のような美しさを持っています。この美しさこそが最大の特徴であり魅力なのです。琥珀はパワーストーンとしても人気が高い素材です。ストーンと呼ばれていますが、正確には木の樹脂が長い年月を経て石化したものですから、鉱物ではありません。ですが、美しさ、強度共に宝石と比較しても遜色がないため印鑑の素材としても使用されています。 近年では、化学樹脂と天然琥珀を合成して出来た琥珀印材もあります。 チタン 数少ない金属素材の印鑑であるチタン。人気の秘密は、そのクールでスタイリッシュな見た目と、チタンならではの耐久性や機能性にあります。 実印や銀行印は一生使い続ける大事な印鑑です。破損したりすり減ったりして使えなくなってしまった場合、再度購入し面倒な再登録手続きも済ませなければいけなくなるので、素材選びから慎重にならなければいけません。 その点を踏まえて、チタンは傷がつきにくく、トップクラスの耐久性を誇る印鑑素材で実印や銀行印などの用途にも最適な印鑑です。法人や経営者の中でも実印として用いる方が多くいらっしゃいます。 印鑑の中では珍しい金属素材の「チタン」。他の印材に比べて、傷や破損のリスクが圧倒的に少ないのが特徴です。 最も多く販売されているポピュラーな「ブラストチタン」であれば、特殊な表面加工をしてありますので汚れがつきにくく綺麗なまま使い続けることができます。まさに、一生ものの実印や銀行印にふさわしい素材であるといえます。 朱肉の付きが良い印材に「象牙」がありますが、チタンは象牙に匹敵するほどの捺印性を持っています。これは、チタンは元々超微粒子で密度が高く、適度な量の朱肉を吸着するという性質があるためです。また、加工が難しい素材で精密機械を使って彫刻するため、細かく美しい線に仕上がり、綺麗な印影が残せます。 合わせて読みたい チタンの印鑑はなぜおすすめ?デメリットについても解説! 印材の価格 好みの印材が見つかりましたでしょうか?最後に、印材の価格についてご説明させていただきます。 同じ印材でも価格が大きく違うものがあります。印鑑材料メーカー、印材問屋さんの方で分けられているもので 「クラス」毎に異なった価格で供給されています。例外はありますが、これらは元になった個体品種の違いではありません。印鑑の形に加工した後、目視にて均質性や、色、希少性などにより分けられています。このため1本の材料から切り出し作られた印鑑にも「高価格なもの」から「安く供給されるもの」が混ざります。また、目視(官能検査)で分けられるため全ての人の嗜好に合うものでもありません。印材によっては模様の出かた、色合いが大きく異なりますので、気になる方は店頭で現物を確認してお選びになったほうが良いかと思います。 大切なシーンで使うハンコです。しっかり吟味して選んでくださいね!

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