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印鑑の歴史

印鑑の歴史

公開日:2022.5.23 最終更新日:2024.11.2 日本は印章文化だと言われていますが、「印鑑」はいつからあるのかご存知でしょうか?改めて印鑑の歴史を見ていきたいと思います。 印鑑とハンコ 印鑑の歴史を始める前に、印鑑とは何かということを確認したいと思います。  印章:いわゆるハンコの本体のことです。木やプラスチック、金属などでできています。  印影:ハンコを押した結果、紙におされる模様のことです。  印鑑:ハンコを押した結果、紙に残る印・模様。 印影をまとめた一覧の名簿。 ハンコ本体のことを印鑑と呼ぶことがありますが、本来の意味では間違っています。ですがここでは分かりやすいように、一般的なハンコ本体のことを「印鑑」と呼んで説明していくことにします。 印鑑の起源 印鑑の歴史は非常に古く、6千年にもおよぶと言われています。発祥は紀元前四千年前、世界で最初の文明であるメソポタミア文明とされています。 権力者しか持つことが許されなかった 当時の印鑑は、石や骨など円筒形の外周に絵や文字を刻んで、粒土の上で転がして使用するものであったと考えられています。 このような印鑑を紐に通して首からかけて身につけていたようです。書簡を封印する際に使用する目的から、高い地位を示す権力の象徴であったとも言われています。 中国で印鑑制度確立 印鑑はやがてエジプト文明、インダス文明、中国文明など世界各地へ広がっていきます。西は、ギリシア・ローマを経て欧州各地に影響を与えましたが、欧州では印鑑を押すという制度も習慣もほとんど残されませんでした。 一方、東の中国へ伝播したのは約2,200年前、奏の時代になります。中国の統一を果たした始皇帝が、官印の制度(印章制度)を定め、大きく発展を遂げました。その時に文字の統一も行われ、今でも印鑑などに使用される「篆書体(てんしょたい)」の基本ができました。 中国から日本へ 漢の時代に更に印鑑が盛んになり、皇帝から官史や将軍に信頼や統治の証として印鑑が授けられるようになります。福岡県志賀島で出土した「漢委奴国王」の金印(国宝)も、同様に贈られたものになります。 日本での印鑑 日本での印鑑の文化がいつ頃から印鑑が使われ始めたのか、明確な資料が無いのですが、最初から広まった訳ではなく一部の権力者のみが使うという文化であり、一般庶民は印鑑を持つことさえ出来なかったと考えられています。 日本史でおなじみの… 日本に存在する最古の印は先程ご紹介しました「漢委奴国王」の金印といわれています。5世紀前半に中国で書かれた「後漢書東夷伝」の中に、後漢の光武帝が、紀元57年に、倭の奴国に印綬(役人の身分を証明する印と、それを身につけるための組み紐)を授けたことが書かれています。 日本で印鑑制度が整備されたのは、大宝元年(701年) 奈良時代に中国(唐)の方式を基準として制定された「大宝律令」からと言われています。支配者の公の印としてのみに政府や地方で使用されて、個人で製造・使用することは禁じられていました。 平安時代になると貴族も個人の印鑑を使用することが許されるようになります。鎌倉時代には中国(宋)との貿易によりいろいろな文化が導入される中、僧侶などが書画に使用するための「落款印(らっかんいん)」なども流行していきます。 いまも作品に使用されている落款印 戦国時代に入ると、武将たちがそれぞれ権力と威厳を表現するため趣向を凝らした私印を用いるようになります。織田信長の「天下布武」印、上杉謙信の「地帝妙」印、豊臣秀吉の「豊臣」印などが知られています。 約四百年前にポルトガル人が渡来し、鉄砲といっしょに印章篆刻技術が伝わったともいわれています。南蛮品を好んだことで知られる織田信長は全国から100名の職人を集めポルトガル人講師の下で講習させて特別優秀な三名に「細字(さいじ)」の姓を与え、帯刀を許したのがわが国「印章師」の発祥であるといわれています。 江戸時代には商業や貨幣の発達に伴い、帳簿類の整備が進み、印鑑の使用が習慣化して庶民に普及していきます。 1873(明治6)年10月1日、「本人が自書して実印を押すべし。自書の出来ない者は代筆させても良いが本人の実印を押すべし。」と太政官布告にて公式の書類に署名と実印を押すよう制度を定められました。これが、現在の印鑑登録制度が導入されるきっかけとなりました。 また、このことを記念して毎年10月1日は「印章の日」と定められて全国で記念行事などが行われています。 世界の印鑑 今日、印鑑を使う国は世界にどれほどあるのでしょうか? 欧米 アメリカ・ヨーロッパはサイン文化であり、印鑑を使うことはほぼありません。印鑑の発祥・メソポタミアで使われていたように、書簡を封印するための「シーリングスタンプ」が残る程度です。 一方、東のアジア地域はどうでしょうか? 印鑑の文化は中国から日本に伝わりましたが、中国では印鑑制度は存在していません。中国では、落款印などの趣味の印鑑として楽しまれていますが、印鑑を押す習慣は無くサイン証明の制度がとられています。1914年に韓国が日本の印鑑制度を導入しました。同様に1906年に台湾でも導入されています。 日本に旅行に来られた海外の方が、記念やお土産に印鑑を購入されるということもあるようです。 印を捺す意味 とは スケールの大きな話になりましたが、大切なシーンで使用するという意味では変わりないことを再確認できたと思います。最後に「印を捺す」という意味を改めて考えてみたいと思います。 多くの方が思い浮かべるのが「この文章を私は承認しました」という『本人確認』のためではないでしょうか? 実はこれは不正解です。正解は『意思の担保』になります。すなわち、押印した書類の内容を承認した証拠(担保)として相手に差し出すことを目的に捺すのです。相手に渡さなければ意味を成さないもの なのです。 6,000年も前のメソポタミアで発祥した印鑑。高い地位の権力者しか持つことを許されなかった印鑑。 現在のわたしたちが捺す印鑑について、改めて思いを巡らすきっかけになれば幸いです。

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印材の種類

印材の種類

公開日:2022.5.23 最終更新日:2024.11.2 いざハンコを作ろうとしたら、店員さんに「印材は何にしますか?」と聞かれて戸惑うことがあります。そもそも印材って何?そのあたりから解説してみたいと思います。 印材とは 字面を見るとイメージが付くかと思いますが、「印章」を彫るための「素材」を「印材」と呼びます。古くは動物の骨や石などが使われていました。現在では耐久性が良いとされる「チタン」などの金属や、安くて強度があることで普及したプラスチックなど、いろいろあります。今回は、特に人気のある印材をセレクトして、特徴や印材の作り方などをご説明させていただきます。 本柘 伊豆諸島、鹿児島、東南アジア等に生育する柘植の木を加工して印鑑材料としたものです。年輪が非常に細かく彫刻に適しています。印鑑素材の中で最も安く、広く普及している素材です。 実印や銀行印、認印など広い用途で用いられており、印鑑を買う際に必ず候補に上がるほど有名な印鑑素材です。特に生産地が鹿児島県のものを「薩摩本柘」というブランド物の印鑑です。薩摩本柘は、実印や銀行印さらには法人用印鑑としても人気で、高級品と言われる割には、低めの価格で流通しており、安価で良質な印材として有名です。 黒水牛 東南アジア等で家畜として飼育されている水牛の角から作った真っ黒い印鑑です、一般的な印鑑として広く用いられています。黒さを引き立てる為の染め加工と、ひび割れ防止の為の加工がされている印鑑素材です。自然素材なので1つとして同じ模様の印鑑はありません。 また、黒水牛は耐久性にも優れていてとても丈夫です。特に、角の芯に近い部分は高級品として有名です。ただし、管理には少し注意が必要です。黒水牛の主成分はタンパク質です。そのため、乾燥や虫食いに注意しなければなりません。しっかりとケースにしまって保管するなど、ちゃんとお手入れをしていれば長い間つかうことができる素材です。 さらに、捺印性に優れているのも特徴。黒水牛の印鑑は朱肉のツキが良く、印影がきれいで押しやすい印鑑です。 象牙 アフリカ象の牙を加工して作られた印鑑です。象牙は古くより、装飾品、三味線のバチ、琴のツメ、パイプ、玉突きの玉などに使用されていますが、印鑑の材料としても細かな彫刻に適し、印肉の捺印性が良く、対摩耗性にも優れた印鑑の高級品です。 象牙は、真っ白よりも少し黄色みがかった落ち着きのある色合いで、 控えめな牙の模様がとても味わい深く、使えば使うほど艶が出てきて深みが増します。 牙の部位の中でも、印鑑に使われる部分は耐久性が高く、耐摩耗性にも優れているため、象牙印鑑は印面の欠けや磨り減りが起こりにくいという利点があります。そのため、象牙印鑑は、丁寧に扱えば一生ものとして使える丈夫な印鑑です。象牙が実印などに向いているのは、この優れた耐久性も理由の1つです。 高級素材として有名な象牙印鑑ですが、実は象牙の部位によってランクが分かれています。一般的な象牙印鑑のランクは、中心部分から順に「中心層」、「中皮層」、「外皮層」の3つに分かれます。この中でも最高級品が「中心層」の象牙印鑑。次に、「中皮層」、「外皮層」と続きます。 なぜ、象牙印鑑がこのようにランクが分かれているかというと、部位によって耐久性と希少性が違うためです。基本的に象牙は、中心部に近いものほど、高い繊維密度で目が細かく、密度が高いため丈夫です。さらに、「中心層」の印材は、1本の象牙から1〜2本しか取れず、希少価値があるので、高いランクになっています。 牛角(オランダ水牛) オランダ水牛は、飴色・クリーム色で透明感のあるボディが特徴。なめらかで落ち着いた色合いがとてもおしゃれで、独特の高級感を放っています。実用面でも他の角・牙素材の印鑑と同じような性質を持ちます。 まず、オランダ水牛は耐久性が高いのがポイント。しっかりとケースに入れて保管すれば、長いあいだ使用できる丈夫な印鑑です。また、朱肉のツキがよく、捺印性が高いのも特徴。手になじみやすく、持ちやすいので、きれいな印影がしっかりと押せます。ただし、主成分がタンパク質なので、管理には少し注意が必要です。 乾燥に弱いので、剥き出しのまま、直射日光に当たるところに放置するのはやめましょう。また、虫に狙われるので、タンスなどにしまう際は、防虫剤と一緒に保管するように心がけてください。 琥珀 琥珀は、印鑑素材としてはとても有名な印材。特に女性の方に人気で、実印や銀行印といった大切な印鑑用に購入される方が多くいらっしゃいます。その美しさは太陽の石や人魚の涙などとも呼ばれる程。その美しさの一番の要因は特徴的な黄褐色です。 高級素材として知られており、印鑑の中では本象牙と肩を並べる存在でもあります。一見、鉱物に見える「琥珀」ですが、実は植物から生成される宝石なのです。 樹木の樹脂が長い年月をかけて固化することで美しい琥珀へと変化します。そのため、大量生産できないので、希少価値が非常に高い素材なのです。樹脂が固まる段階で不純物が少なければ少ないほど、透き通った透明感が美しい琥珀ができ上がります。反対に葉や花、古代の昆虫などが固化の段階で混じり、不純物が多い状態になると特徴的な模様が浮かび上がり、色に深みが増します。 このような生成過程の特徴から、世界に同じものが1つとして存在しないことも魅力だと言えるでしょう。主な産地は北ヨーロッパのバルト海沿岸。そのため、ヨーロッパでは古くから宝飾品として人気が高い素材でした。 琥珀の印鑑はまるで宝飾品のような美しさを持っています。この美しさこそが最大の特徴であり魅力なのです。琥珀はパワーストーンとしても人気が高い素材です。ストーンと呼ばれていますが、正確には木の樹脂が長い年月を経て石化したものですから、鉱物ではありません。ですが、美しさ、強度共に宝石と比較しても遜色がないため印鑑の素材としても使用されています。 近年では、化学樹脂と天然琥珀を合成して出来た琥珀印材もあります。 チタン 数少ない金属素材の印鑑であるチタン。人気の秘密は、そのクールでスタイリッシュな見た目と、チタンならではの耐久性や機能性にあります。 実印や銀行印は一生使い続ける大事な印鑑です。破損したりすり減ったりして使えなくなってしまった場合、再度購入し面倒な再登録手続きも済ませなければいけなくなるので、素材選びから慎重にならなければいけません。 その点を踏まえて、チタンは傷がつきにくく、トップクラスの耐久性を誇る印鑑素材で実印や銀行印などの用途にも最適な印鑑です。法人や経営者の中でも実印として用いる方が多くいらっしゃいます。 印鑑の中では珍しい金属素材の「チタン」。他の印材に比べて、傷や破損のリスクが圧倒的に少ないのが特徴です。 最も多く販売されているポピュラーな「ブラストチタン」であれば、特殊な表面加工をしてありますので汚れがつきにくく綺麗なまま使い続けることができます。まさに、一生ものの実印や銀行印にふさわしい素材であるといえます。 朱肉の付きが良い印材に「象牙」がありますが、チタンは象牙に匹敵するほどの捺印性を持っています。これは、チタンは元々超微粒子で密度が高く、適度な量の朱肉を吸着するという性質があるためです。また、加工が難しい素材で精密機械を使って彫刻するため、細かく美しい線に仕上がり、綺麗な印影が残せます。 合わせて読みたい チタンの印鑑はなぜおすすめ?デメリットについても解説! 印材の価格 好みの印材が見つかりましたでしょうか?最後に、印材の価格についてご説明させていただきます。 同じ印材でも価格が大きく違うものがあります。印鑑材料メーカー、印材問屋さんの方で分けられているもので 「クラス」毎に異なった価格で供給されています。例外はありますが、これらは元になった個体品種の違いではありません。印鑑の形に加工した後、目視にて均質性や、色、希少性などにより分けられています。このため1本の材料から切り出し作られた印鑑にも「高価格なもの」から「安く供給されるもの」が混ざります。また、目視(官能検査)で分けられるため全ての人の嗜好に合うものでもありません。印材によっては模様の出かた、色合いが大きく異なりますので、気になる方は店頭で現物を確認してお選びになったほうが良いかと思います。 大切なシーンで使うハンコです。しっかり吟味して選んでくださいね!

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