公開日:2023.5.29 最終更新日:2024.11.1
銀行や役所、仕事などで書類に捺印する際に、何気なく使用している朱肉は、さまざまな種類やサイズが展開されています。スタンプ台と同じような用途で使用される朱肉ですが、それぞれに違う特徴があるのです。今回は朱肉の種類ごとの特徴をはじめ、スタンプ台との違いやメンテナンス方法についてご紹介します。
朱肉とは?
朱肉は、印鑑を捺すときに使用する赤色の印肉を指します。朱肉が入っている容器には、肉池(にくち)や印池(いんち)という呼び名がありますが、容器も含めて「朱肉」と呼ばれることが一般的です。
印鑑そのものは、古代メソポタミア文明の頃から使用されていたといわれていますが、朱肉が登場するのは中国の宋代といわれています。
朱肉が歴史上に登場する以前は、泥を使って印鑑を捺していました。朱肉が「印泥(いんでい)」と呼ばれることがあるのは、そのためです。
朱肉が朱色なのは、ただ単に目立つという理由だけではありません。神社の鳥居にも使われているように、朱色は縁起が良く、魔除けの色として古くから知られていることも関係しています。
朱肉の種類
現在販売されている朱肉は、「スポンジ朱肉」と「練り朱肉」の大きく2タイプに分けられます。それぞれに特徴があり、メリットとデメリットがあるので、用途に合ったものを選びましょう。
スポンジ朱肉
スポンジ朱肉は、一般的にビジネスシーンで多く使われているため、事務用朱肉とも呼ばれています。その名の通り、スポンジやフェルト生地に朱色のインクを染み込ませたものです。朱肉といえば、スポンジ朱肉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
スポンジ朱肉のメリット
スポンジ朱肉のメリットには、印鑑を捺したあとの乾きが早いことがあげられます。押印後すぐに印影が乾く速乾タイプも販売されており、多くの書類に押印をした後すぐにまとめたいときにもおすすめです。
また、印鑑をスポンジ朱肉に軽く押さえるだけで、印面にインクが均等に付着します。持ち運びしやすく、誰でもきれいに印鑑を捺せるため、使い勝手の良さが特徴の朱肉といえるでしょう。
特別な手入れは不要なうえ、インクを補充できるタイプも多く販売されているため、同じ朱肉を長期間使い続けることも可能です。
スポンジ朱肉のデメリット
スポンジ朱肉は、手入れの容易さや機能面の良さから、多くの人にとって使いやすい朱肉ですが、印影があっさりしており、鮮明さに欠けるともいわれています。
朱肉にこだわりを持つ人からすると「色に深みがない」「印影に厚みがない」と感じるかもしれません。
また、練り朱肉と比べて長期間の保存に弱く、印影が色褪せやすいこともデメリットとしてあげられます。
練り朱肉
練り朱肉は、古くからの歴史があり、植物の油や顔料などを和紙やよもぎ草のような繊維質と練って泥上にした朱肉です。印泥と呼ばれるのは練りタイプの朱肉で、本格派の朱肉としてこだわりを持って愛用する人もいます。品のある高級な容器に入れられているので、見た目で楽しめるのも特徴です。
練り朱肉のメリット
練り朱肉のメリットとしてもっとも注目されるのは、印影の美しさです。スポンジ朱肉と比較すると印影に厚みがあり、色の深みや鮮明さに関してもこの上ない美しさを誇ります。サイズが大きな印鑑を捺す際には、より印影の美しさが実感できるでしょう。
長期間の保存に対しても、色褪せることなく鮮明な印影を残すことが可能です。変色もしにくく、捺したときの状態をキープできるため、大切な書類や重要な契約時の捺印に向いています。
朱肉の色も明るめや濃いめ、青系や緑系、黄色系など、バリエーション豊富です。書や絵画などに捺す、落款印に使用するのもおすすめです。
練り朱肉のデメリット
練り朱肉は、美しい印影を残せる反面、乾くまでに時間がかかります。事務作業などで大量の書類に捺印し、すぐに書類を重ねたいときには適していません。扱いに慣れていないと、乾ききっていない状態の印影に触れてしまい、書類を台無しにしてしまうケースもあるでしょう。
また、普段のメンテナンスを怠ると、固まったり、腐ってしまったりして使用できなくなります。高級品ほど腐りやすいため、使用頻度を問わず定期的に専用のヘラで練り朱肉を混ぜ、分離しやすい成分を均等な状態にしておく必要があるのです。
乾燥や温度変化に弱い特徴もあるため、保存場所には気を使わなければなりません。さらに、据え置き用として容器が作られているため、持ち運びに向いていない点もデメリットといえます。
さらに、使い方にも少しコツが必要です。スポンジ朱肉と比較して、練り朱肉は印面に印肉を均等に付けるのが難しいといわれています。コツが掴めていないうちは、自分の指に印肉を付けて、印面に指で印肉を移してから捺すのが良いでしょう。
朱肉とスタンプ台の違い
朱肉と混同されることが多いのは、ゴム印で使用するスタンプ台です。スタンプ台でも朱肉と同じような色が販売されていることから、どちらも同じと考え、スタンプ台を使って印鑑を捺したことのある方もいるのではないでしょうか。
朱肉は印鑑用に、スタンプ台はゴム印用に作られていることから、インクの成分が異なる場合があります。
現在、事務用スタンプ台の多くは顔料系インクに変わってきていますが、クラフト用の一部のスタンプ台では、染料系インクが使用されています。
染料は光に弱く、紫外線の影響を受けて色褪せしてしまいます。
そのため、印鑑を捺すシーンでは、契約や承認など重要な書類に押印することが多く、色褪せが起きやすい染料系インクは向きません。
ただし、染料系インクは、顔料系よりも色が鮮やかで乾きが早い特徴があるため、銀行のように大量の書類にハンコを捺すのに早く乾いた方が都合の良い業種では、好まれることもあります。
それに対して朱肉は、紫外線に強く、退色しにくい特徴を持っています。
また、スタンプ台はゴム印用に作られていることから、油性インクではなく水性インクで作られているものもあります。これは、ゴムが油に弱い性質を持っていることから、ゴム面を傷めるのを防ぐためです。
水性インクのスタンプ台を印鑑で使用した場合は、水が触れると滲み、印影を保てません。大切な書類を長期保存するには、やはり印鑑には朱肉を使用するのが望ましいといえるでしょう。
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朱肉が乾燥してしまったときのメンテナンス方法
朱肉は、種類を問わずメンテナンスをしなければ長く使い続けることができません。ここでは、朱肉の種類別にメンテナンス方法を紹介します。
スポンジ朱肉の場合
スポンジ朱肉は、乾燥して固まってしまうことはありません。ただし、表面が乾いてきたときやインクが少なくなってきたときには、印影が薄くなったり、かすれてしまったりします。
このような場合には、補充インクを足すことで繰り返し朱肉を使い続けることが可能です。スポンジ朱肉用に販売されている補充インクを用意し、キャップをしたまま上下に複数回しっかりと振ります。補充前に振るのは、インクの成分を均一にし、色ムラが出ないようにするためです。
インクが混ざったらキャップを外して、朱肉のスポンジにインクを染み込ませていきます。このとき、ゆっくりと円を描くようにしてスポンジ全体にインクを浸透させましょう。
インクを補充したら、馴染ませるために30分ほど時間を置きます。最後は、朱肉の表面に出ている余分なインクをティッシュで拭き取ればメンテナンス完了です。
表面が乾燥しているからといって、水を足すのは厳禁です。朱肉のインクには油分が含まれており、水を足すと分離して使えなくなってしまいます。必ず、専用の補充インクを用意しましょう。
練り朱肉の場合
練り朱肉は、メンテナンスの頻度が高い朱肉です。メンテナンスを怠ると、朱肉が乾燥して固まってしまったり、カビが生えて腐ったりすることがあります。
表面だけが乾いている場合は、「朱の油」と呼ばれる朱液を足して、専用のヘラで均一に混ぜ合わせてください。
練り朱肉は固すぎる、または柔らかすぎるのどちらでもうまく押印できなくなるので、朱の油を使う際は、少しずつ調整しながら足していきましょう。
長年、メンテナンスを行っておらず全体が乾いて固まっている場合は、容器ごと温めます。電子レンジを使用する方法や湯煎する方法がありますが、どちらの方法でも少しずつ様子を見ながら温めるのがポイントです。
温めて少し朱肉が柔らかくなってきたら、専用のヘラを使って全体を練りほぐしていきます。固くて混ぜにくいときは、ヘラ自体を温めてから混ぜるのもおすすめです。
練りほぐす際は、固い部分と柔らかい部分の差が出ないように、均一に丁寧に練りほぐしましょう。
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まとめ
今回は朱肉の種類やメンテナンス方法について紹介しました。スポンジ朱肉、練り朱肉それぞれの特徴を踏まえて、ご自身の用途に合った朱肉を選んでみてください。
中でも、手軽で機能的な朱肉をお求めの方には、シュイングベベがおすすめです。超分散タイプの油性顔料系を採用しており、印鑑を捺した瞬間に乾きます。スポンジ朱肉であるものの、新開発した2層パッドを使用しているため、印影がくっきりと鮮明に残るのが特徴です。
また、耐水・耐光・耐薬品性に優れ、長期保存が必要な重要な書類にも安心して使用できます。さらに、携帯性に優れたケースなので、バッグの中に入れておけばさまざまなシーンで活用可能です。