契約書に印鑑を押す際に「割印」を求められることがあります。
複数の文書にまたがってハンコを押すことを指しますが、どのように押せば良いのか迷っている方もいるかもしれません。
そこで今回は、割印の正しい押し方や印鑑を押す位置について解説します。割印の押し忘れや失敗したときの対処法もご紹介します。
契約書に押す割印とは?
ここでは割印とは何か、ほかのハンコとの違いなど基本的な事項を解説します。
割印とは?
割印とは、2部以上の書類にまたがってハンコを押すことです。割印によって、複数の書類が同一の内容であることを証明できます。
割印を押す目的は書類の改ざんやコピーを防ぐことです。契約書など、どちらかの書類が改ざんされれば、一方の書類の内容と異なってしまいます。割印が押されることで、各書類に関連性があることがわかるため「どちらも偽造ではない」といった証明になります。
割印と契印との違い
複数の書類にまたがってハンコを押す割印ですが、混同しやすい言葉に「契印(けいいん)」があります。どちらも複数の書類にまたがってハンコを押す点は共通です。しかし、押印する場面と目的が異なるため、ふたつの違いをしっかりと確認しておきましょう。
契印とは、ひとつの契約書が複数ページにわたった場合に、その文章に連続性があることを証明するために押されます。契印は、文章の抜き取りや差し替えを防ぐことが目的です。
また、割印と契印では、それぞれに使用できるハンコの種類も異なります。割印はサイズの規定がありませんが、契印の場合は契約書の署名・捺印で使用したものに限られます。法人で押印する代表印は「辺の長さ1〜3cmの正方形に収まるもの」と規定があります。
割印の正しい押し方・位置
ここでは割印の正しい押し方と位置について、3つのケース別に紹介します。
契約書と控えへの押し方・位置
契約書には原本と控えがあり、それぞれの関連性を示すために割印をします。割印を押す際は、ふたつの書類を少しずらした状態で、両方の書類にまたがるように押印しましょう。どちらか一方に、印影の大きさに偏りがでないよう十分に注意してください。
割印を押す位置は法的に定められていませんが、契約書の上部に押すのが一般的です。複数名が署名・捺印する場合は、全員分のハンコが必要となります。ハンコの大きさに規定はありませんが、法人名で契約しているのであれば社名が刻印されたものを使用しましょう。
3部以上の契約書への押し方・位置
3部以上の契約書を同時に作成する場合は、すべてに割印をしなければなりません。しかし、使用するハンコの大きさによっては、3部同時に割印を押すことが難しいケースもあるでしょう。この場合、書類AとBに割印、書類BとCに割印のように2箇所に割印を押すこともできます。
3部以上にわたる契約書に割印をすることが多い方は、縦に長い割印専用のハンコを作成するのも良いでしょう。専用のハンコは必須ではないものの、押印する際の効率化につながります。
領収書と控えへの押し方・位置
割印は、領収書とその控えの関連性と金額の整合性を示すためにも押されます。領収書と控えは1枚でつながっていることが多く、それぞれをハサミで切り離せるようになっています。領収書と控えに割印をする場合は、切り取り線にまたがるように押印しましょう。
領収書は書類を発行した側がその控えを持っておくことで、代金を支払った側と記録を共有することができます。領収書に割印をしておけば、相手から「金額が間違っている」など連絡を受けた際でも、控えと照らし合わせればすぐに対処できるのが特徴です。
割印をきれいに押すためのコツ
割印は複数の書類をまたがってハンコを押すだけですが、単純な作業に見えて、意外にも難しく感じます。割印を押そうとして、きれいに押せないと苦労する方も多いのではないでしょうか。ここでは、割印をきれいに押すためのコツを紹介します。
印鑑マットを使用する
ハンコを押す際に、きれいな印影にするために使用するのが印鑑マットです。固い机の上でハンコを押しても、書類に朱肉を上手につけることは困難です。割印を押す場合も同様で、紙の厚みによる段差があるために、下側の書類にうまく朱肉がつきません。
適度な弾力のある印鑑マットを書類の下に敷くことで、紙の厚みによる段差を緩和させることができます。下側の書類にも朱肉がつきやすくなるため、きれいに割印できるのです。手元に印鑑マットがない場合は、マウスパッドや厚みのあるメモ帳などを代替品として使用しましょう。
複数のページがある場合は1ページ目を開いて重ね合わせる
契約書に厚みがあったり、複数ページでまたがっていたりする場合、印鑑マットを使っても割印をきれいに押せません。ページ間の段差があってうまく押せない場合は、1ページ目だけを開いて重ね合わせた状態で割印をするときれいに押すことができます。もちろん、通常のハンコを押すときと同様に、印鑑マットを忘れずに敷いてください。
割印を失敗・押し忘れた際の対処法
割印はページ間の段差によって、きれいに押せず印影がかすれることもあるでしょう。また、割印が指定されていても押し忘れることがあるかもしれません。ここでは、割印を失敗・押し忘れた際に覚えておきたい対処法を紹介します。
割印を失敗した場合の訂正方法
割印をうまく押せなかった場合に「同じ場所にハンコを重ねて押す」と考える方もいるでしょう。しかし、ハンコを同じ場所に重ねてきれいに押すことは不可能です。また、二重にハンコを押すことで、相手から不正を行ったとみなされかねません。失敗した割印に二重線を引いて訂正することも、書類を汚すことになるため控えてください。
割印を押す際に失敗したら、場所を変えて押印するようにしてください。失敗した割印は訂正線を引く必要はなく、そのままで問題ありません。
割印を押し忘れたら契約書の効力はどうなる?
契約書に割印を押さなければならないと、法律で定められているわけではありません。割印の役割は、複数の書類に関連性がある、書類の内容が改ざんされていないことを証明することです。もし契約書に割印を押し忘れたとしても、契約書が無効になることはないでしょう。
割印を押し忘れたことに気付いたときは、落ち着いて行動することが必要です。契約相手がすぐに書類を取り出せる状況にないことも想定されます。そのため、タイミングや状況を見ながら相手に相談することはもちろん、契約書に変更がないかも念のため確認しましょう。
割印専用のハンコを作る際のポイント
割印に押すハンコに規定はなく、基本的には、書類に捺印したハンコと同じものを使用します。しかし、複数ページにわたって割印を押す場合など、一般的なハンコでは失敗する可能性も高まります。ここでは、割印専用のハンコを作る際のポイントを紹介します。
割印に適したサイズ
割印専用のハンコを作る際に、参考にしたいサイズは以下の3つです。
・30×12mm
・33×13.5mm
・36×15mm
割印に適したサイズのハンコを作るには、刻印する文字数を考慮することが大切です。文字数の少ない法人名であれば「33×13.5mm」、文字数が多い法人名で割印専用のハンコを作る場合は「36×15mm」を目安にするのがおすすめです。
サイズを選ぶ際に刻印する文字数を考慮すると、バランスの良いハンコを作成できます。
割印に適した書体
割印に使用するハンコの書体に規定はなく、好みで選んでも問題はありません。ただし割印は契約書に押すことが多いため、複製をされにくい書体が適しています。
割印におすすめの書体は「篆書体(てんしょたい)」と「古印体(こいんたい)」です。
篆書体は実印に多く使われる書体で、日本銀行が発行する紙幣にも用いられています。現代文字とは少し異なる書体で偽造されにくいのが特徴です。
古印体は銀行印として使用されることが多く、線が太く丸みのある字体が特徴です。線の太さが均一でないことから複製されにくい点が古印体のメリットです。
まとめ
割印は複数の書類の関連性を証明するために押印するもので、契約書の偽造や改ざんを防ぐ役割を持ちます。一般的なサイズのハンコだと割印をするのが難しく、失敗する可能性が高まります。割印で使用するハンコに規定はありませんが、専用のハンコを持っておくと便利です。契約書に割印をする機会が多く、きれいに押せないとお悩みの方は、割印専用のハンコの作成を検討してみてください。