ハンコを斜めに押す「お辞儀ハンコ」とは。押印時の注意点を紹介

業務を進めるうえで、上司に決裁を仰がなければならない場面があります。決裁には書類を回覧して行うところも多いので、印鑑を使うことが一般的です。その際に、印鑑を上司が押す部分に向けて斜めに押印するよう教わった方もいるのではないでしょうか。

この「お辞儀ハンコ」をマナーとして取り入れている会社もたくさんあります。今回は、お辞儀ハンコの意味や押印時の注意点について解説します。

ハンコを斜めに押す「お辞儀ハンコ」とは

お辞儀ハンコは、印影が斜めになるように押印する風習のことで、一部業界にあるビジネスマナーの一種です。目上の人の印鑑にお辞儀をするように斜めに押すことから、そのように呼ばれています。

しかし、お辞儀ハンコはすべての業界に共通したマナーというわけではありません印鑑の押し方によって印鑑の効力が変わることはないため、印鑑の角度を気にせずに使用している企業もたくさんあります。

目上の人に向けてお辞儀のように斜めに傾けることで、敬意を表すとされています。

お辞儀ハンコの風習が根付いている業界もある

お辞儀ハンコは、礼儀や格式、上下関係を重視する業界に多く見られるマナーです。例えば、銀行や証券会社などの金融業界、官公庁などが当てはまります。これらの業界では、複数人の承認を必要とする稟議書や請求書などの書類を作成する際に使われるのです。

日本は古来より上下関係を大事にしてきた歴史があるため、お辞儀ハンコもそうした文化に基づいてできたマナーだといえます。

「お辞儀ハンコ」で斜め押しするときの注意点

お辞儀ハンコは、一般的なマナーではないため、すべての企業に適用されるわけではありません。まずは社内マナーを確認して遵守するのが無難です。また、社外取引書類への使用は避けた方が無難です。

お辞儀ハンコを押すときは、いくつかのルールがあります。

まず、印鑑を押すときに傾ける方向は左向きが鉄則です。左に向かっていくにつれて、自分より立場が上の人の印鑑になるので左向きに押しましょう。

次に、傾ける角度は5度程度が目安です。しかし、役職が下がるほど傾けて押印することがマナーになっているので、自分の立場を考慮しながら押印しましょう。

【ハンコの押し方】許容される範囲とは

印鑑は、その押し方に関する公的・法的な決まりがあるわけではありません。ただし、印影が綺麗にくっきりと出るように押印するのが好ましいです。文字が不鮮明だと受理されない可能性もあるため、印鑑はしっかり押し付けて押すことが大切です。

ここでは、印鑑を押すときのOKの範囲とNGの範囲の目安を紹介します。

OK例

印鑑を押すときは文字がかすれないようにしっかり押すのが基本となります。しかし、力の入れ方を間違えて文字がかすれてしまうこともあります。この場合、文字を認識できる程度のかすれならOKです。文字が読み取れることが大切なので、文字を認識できれば問題ありません。

また、同じように文字が欠けてしまうことも考えられます。この場合でも、文字を認識できる程度の欠け方であれば問題ありません。

ほかにも、まっすぐ押したつもりが、若干斜めに傾いているという場合でも問題ないとされています。まっすぐ押した方が美しいですが、斜めでも大きな問題はありません。

文字が認識できる程度のミスなら問題なく受理されることがほとんどなので、あまり力まずにリラックスして押印しましょう。

NG例

押印のときに文字がかすれて、文字を認識できない場合はNGとなってしまいます。また、同じく文字が認識できないほどの欠けがある場合も、残念ながら受理してもらえません。

ほかにも、印影が全体的に薄い場合は文字が認識できない可能性があるのでNGです。また、押印のときに手がブレて二重になってしまった場合も、押し直しを求められます。さらに、上下逆向きに押してしまった場合も、正しい文字の認識が難しくなってしまうのでNGです。

文字が認識できるかどうかがOKとNGの境界になります。これはNGかもしれないと心配になったときは訂正して押し直すことをおすすめします。

お辞儀ハンコをはじめ 失敗せずに押印するコツ

印鑑を綺麗に押したいと思っても、慣れていないとなかなか上手に押せません。コツを掴めば誰でも綺麗に押せるようになるので、ここでは印鑑を一発で綺麗に押すためのコツを5点紹介します。

1. 捺印マットを敷く

印鑑を綺麗に押したいなら捺印マットが不可欠です。捺印マットは、印鑑を押す際に紙の下に敷いて使うマットのことで、ゴム製のものや革製のものなどがあります。

捺印マットを敷けば、書類と印面がぴったりと密着するので、書類に綺麗な印鑑を押すことができるのです。印鑑を押すことが多い人は、ひとつ持っておくと良いでしょう。

手元に捺印マットがない場合は、ノートなど平らで柔らかいものを下に敷くと代わりになります。想定外の場で印鑑を押さなければならなくなった場合は、こうしたもので代用しましょう。

2. 印面の向きと状態をチェックする

印鑑を綺麗に押すには、印面の状態が良いことが大切です。印面に欠けがあったり、ゴミがついていたりすると、綺麗な印影になりません。印鑑を使用する前に、印面の状態を整えてから押印しましょう。

また、印鑑を逆向きに押してしまわないように向きを確認することも大切です。多くの印鑑には、人差し指が当たるところに印があるので、それを目印に印面の上下を確認しておきましょう。

3. 軽く叩くように朱肉を付ける

押印のときは、朱肉をつけすぎるとにじんでしまう可能性もあるので、印鑑を朱肉に押し付けるのではなく、軽く叩く程度で問題ありません。押し付けてしまうと、印面の文字の隙間などにインクが溜まってしまい、綺麗な印影にならない恐れがあります。

また、実印を使うときなど重要な印鑑を押す際は、新しい朱肉を用意するのがベストです。何度も使っている古い朱肉は乾燥している可能性があり、かすれやすくなってしまいます。大切な書類だからこそ、新しい朱肉で綺麗な印影を残しましょう。

4. 書類に対して垂直に押す

印鑑を押すときは、書類に対して印鑑が垂直になるように構え、そのまままっすぐ押印します。親指と人差し指と中指で印鑑を支えて、軽い力で押すと良いでしょう。強く力を入れすぎると、紙の上で印鑑が滑ってしまう可能性があります。

紙から印鑑を離す前に、「の」ノ字を描くように手に力を加えることが綺麗に押すコツのひとつです。力を入れることで印影の欠け防止につながります。

5. 朱肉を毎回拭き取る

印鑑を使ったら、ケースに入れる前にティッシュペーパーなどで朱肉を毎回拭き取りましょう。朱肉をつけたまま保管すると、残っていた朱肉が固まってしまい、目詰まりが起きます。また、印鑑の耐久性が悪くなる原因にもなるので注意が必要です。

印鑑を拭くときは、机の上に布を敷き、印鑑を手に持って滑らせるように拭き取りましょう。このときは、木綿のような伸びにくい布を使うと拭き取りやすいのでおすすめです。毎回のお手入れをきちんとすることで、印鑑も長持ちするのでぜひお試しください。

まとめ

印鑑を斜めに押すマナーである「お辞儀ハンコ」ですが、すべての企業で取り入れられているマナーではありません。もし自分の会社がお辞儀ハンコをマナーとしているのであれば、今回紹介した押し方で綺麗に印鑑を押して文書を作成しましょう。