印鑑と印章っておなじなの?

印鑑と印章って同じ意味として使っていないでしょうか? 実は、それ間違いです。
違いについて改めて解説してみたいと思います。

1. 印鑑の歴史

印鑑の歴史は非常に古く、6千年にもおよぶと言われています。
発祥は紀元前四千年前、世界で最初の文明であるメソポタミア文明とされています。
当時の印鑑は、石や骨など円筒形の外周に絵や文字を刻んで、粒土の上で転がして使用するものであったと考えられています。
このような印鑑を紐に通して首からかけて身につけていたようです。
書簡を封印する際に使用する目的から、高い地位を示す権力の象徴であったとも言われています。

やがてエジプト文明、インダス文明など世界各地へ広がっていきます。

日本に存在する最古の印は福岡県志賀島で出土した「漢委奴国王」の金印(国宝)といわれています。
5世紀前半に中国で書かれた「後漢書東夷伝」の中に、後漢の光武帝が、紀元57年に、倭の奴国に印綬(役人の身分を証明する印と、それを身につけるための組み紐)を授けたことが書かれています。

奈良時代に中国(唐)の方式を基準として制定された「大宝律令」にて、支配者の公の印としてのみに政府や地方で使用されました。しかし個人で製造・使用することは禁じられていました。

平安時代になると貴族も個人の印鑑を使用することが許されるようになり、戦国時代に入ると武将たちがそれぞれ権力と威厳を表現するため趣向を凝らした私印を用いるようになります。織田信長の「天下布武」印、上杉謙信の「地帝妙」印、豊臣秀吉の「豊臣」印などが知られています。

江戸時代には商業や貨幣の発達に伴い、帳簿類の整備が進み、印鑑の使用が習慣化して庶民に普及していきます。

1873(明治6)年10月1日、「本人が自書して実印を押すべし。自書の出来ない者は代筆させても良いが本人の実印を押すべし。」と太政官布告にて公式の書類に署名と実印を押すよう制度を定められました。これが、現在の印鑑登録制度が導入されるきっかけとなりました。

2. 印鑑と印章

このような歴史の印鑑ですが、現在よく耳にする「印鑑」「印影」「印章」「ハンコ」を説明できますでしょうか?

印章:いわゆる「ハンコ」の本体のことです。
   木やプラスチック、金属などでできています。
   手で持って捺す「ハンコ」そのものを指します。

印鑑:ハンコを押した結果、紙に残る印・模様のこと。
     すなわち「印影」を指します。

改めて「印鑑」の「鑑」を辞書で調べてみると、以下のように書かれていました。

  1.  鏡。物の形をうつすもの。てほん。いましめ。
  2.  鏡に照らしてみる。真の姿を考えみる。見きわめる。

「物の形をうつすもの。」という意味からも「印鑑」の意味が汲み取れます。
また「印鑑」には、どの印影が誰のものか分かるようにするためにまとめた『印影の一覧名簿』の意味もあります。

ハンコの本体のことを印鑑と解釈して「印鑑を持ってきてください」などと言うことがありますが、実は間違っています。
正確に言うならば「印章を持ってきてください」と言うべきですね。

 分かりやすいようにこの一般的には、ハンコ本体のことを「印鑑」と呼んでいるのが現状です。

「印鑑を持ってきてくださいね」と言われたとき、「印章ですね」とスマートに返すことができれば知的さをアピールできるのでは無いでしょうか? 知らんけど・・・

3. 印鑑の種類

これから、いろいろな印鑑の紹介をしていきたいと思います。

認印

『認印』は、姓(苗字)のみのタイプが多いと思います。
用途:認印(みとめいん)として通常の契約書、申込書など正式な文書など木やプラスチックなど硬い素材でできている印鑑です。

特に名前がないため「普通の印鑑」としかいいようがないのですが、特に安いものは三文判と呼ばれます。
認印として、個人の方が接する通常の契約書や申込書などに使われることが多いです。日常生活で荷物の受け取りや回覧板「押印してください」と言われたら、ほとんどこのタイプを使うことになるでしょう。

銀行印

『銀行印』というのも聞いたことがあるかと思いますが、これは特別な印鑑ではありません。
銀行との間の取引に使う印鑑として、あらかじめ銀行に登録した印鑑のことを銀行印といいます。

預金の引き出しや振込など、その銀行との間の取引においてはこの銀行印を使わなければなりませんが、それ以外で使うことはありません。はんこ屋さんなどでは、三文判よりも少し大きな印鑑を銀行印として作ることもありますが、実印と同じ印鑑でも、三文判でも問題ありません。

法人では、丸印を銀行印として使う例もあります。
上記のような形状の分類とは異なり、実印か認印かという分類もあります。

実印と認印の違い

『実印』とは、市町村(個人の場合)または法務局(法人の場合)に登録した印鑑のことをいいます。他方、実印以外の印鑑を一般的に『認印』といいます。

重要なのは、実印として登録したものが実印であるという点です。

どんな簡単な印鑑でも登録すればそれが実印になる一方で、どんな仰々しい印鑑でも登録しなければそれは認印です。なお、法人の場合は登録(届出)が必須ですが、個人の場合には必須ではありません。

実印であることの意味

実印として登録すると、「印鑑登録証明書」(個人)や「印鑑証明書」(法人)によって、その印影が自分のものであることを市役所や法務局が証明してくれます。
そして、この印鑑(登録)証明書は本人でないと取れません。(証明書の取得には、個人番号カードや印鑑カードが必要です)

そのため、実印を押した文書と証明書がセットになることで、「この文書に押された印鑑は本人のものである」ということの強い証明となり、ひいてはそれが「この文書は本人が記載したものである」ということの強い証明となります。

このように、実印は証明書とセットでなければ意味がないという点にご注意ください。
証明書がなければ、扱いは認印を押したのと同じです。