「法人印」といっても、形状や用途の違いによってさまざまな種類があります。ビジネスシーンでは、1社が複数の印鑑を使い分けるケースも少なくありません。法人印には大きく分けて「角印」と「丸印」があります。大事な場面で戸惑うことのないよう違いを理解しておくことが重要です。今回は、角印と丸印の違いについて解説いたします。
角印と丸印の違い 1.役割
角印は法人の認印に、丸印は実印に当たるものです。役割が異なるため、押印する書類にも違いがあります。ここでは法人印として使われる角印・丸印それぞれの役割を詳しくご紹介します。
角印:「法人の認印」にあたる
角印は会社印や社判とも呼ばれる角形の法人印です。印影が四角い形をしており、印面には会社名が記されています。領収書や請求書・見積書など、日常業務で頻繁に使用されます。個人でいうところの「認印」のような役割をする印鑑です。
会社設立の際には必要ないため、必ず作成しなければいけない印鑑ではありません。しかし 、領収書や請求書・見積書などの書類にきちんと角印が押印されていると、取引先や顧客からの信頼を得られやすくなります。
また、丸印との使い分けができ、丸印の使用頻度を減らすことにも役立つでしょう。角印は印鑑登録を行わないため、代表印として使用することはできません。
丸印:「法人の実印」にあたる
丸印は代表者印や会社実印とも呼ばれる、代表者としての意思表示を行うための法人印です。契約の締結や商業登記などの会社にとって重要な書類や、行政・官公庁への申請書類などに用途が限定されています。個人でいうところの「実印」のような役割をする印鑑です。
角印と異なるのは、商業登記法により、法人設立時に法務局に登録しなければならない点です。印鑑証明書によって登録された印鑑が本物であることが証明されるため、代表取締役を変更したり、官公庁の入札に参加したり、新しく株券を発行したりなど、重要な場面に限って使用されます。
丸印と混同されやすいものに、法人の銀行印があります。銀行印と丸印は、併用を避けた方が無難です。会社の契約とお金のやり取りについて明確に分けて管理するためにも、金融機関に届け出をする銀行印と、法務局に届け出をする丸印は分けて準備することをおすすめします。
角印と丸印の違い 2.印影
ここでは印影における角印・丸印の違いを紹介します。角印には社名や屋号が、丸印には社名と役職名が刻印されているのが一般的です。その名の通り角印は四角く、丸印は丸い形をしているので覚えやすいでしょう。
角印:社名や屋号を刻印
四角い形をした角印には、「〇〇株式会社」などの社名や屋号が刻印されるのが一般的です。印鑑ショップで角印を注文すると、文字数によっては会社名の末尾に「印」や「之印」という文字が入る場合があります。これはおくり字と呼ばれるもので、印鑑を押したときの文字のバランスを見て付け加えられるものです。
おくり字だけではなく、改行する位置も縦や横の文字数を考慮して作られます。もし改行の位置やおくり字の有無に希望がある場合は、念のため事前に伝えておくとよいでしょう。
また、いくら認印とはいえ、偽造されにくい書体を選ぶこともポイント。よく角印に採用される篆書体と吉相体の書体は偽造されにくいのでおすすめです。
丸印:社名と役職名を刻印
丸印の印影は、丸形で二重の円になっており、内側の枠に役職名、外側の枠に会社名が入るのが一般的です。個人名は不要で、会社名と役職名が入っていれば良いとされています。
内側に入る役職名は、株式会社であれば「代表取締役印」、合資・合名会社であれば「代表者印」、信用金庫であれば「代表理事之印」など、法人の形態によって変わります。
丸印は流出や偽造などで悪用リスクが高い印鑑のひとつでもあります。簡単な印面だと偽造・悪用のリスクがありますが、あまりに可読性の低い書体だと読むのが大変です。書体に規定はなく自由に選べますが、あくまでも社名や役職名が把握できる程度の印面で作成しましょう。
そもそも丸印は適切に管理するために、重要な場面以外では使わないようにできるだけ使用頻度を減らすことが大切です。
角印と丸印の違い 3.サイズ
ここでは角印・丸印の一般的なサイズについて紹介します。角印には正式なサイズの規定はありませんが、丸印は法務局によって大まかにサイズが規定されています。角印や丸印を新たに購入する際はサイズにも注意が必要です。
角印:1辺20~30mm程度
角印には正式なサイズの規定はないため、会社の裁量によって適当な大きさで作成できます。一辺が20〜30mm程度の大きさで作成されることが多く、よく目にするのは1辺の長さが24mmの角印です。
主なサイズは21,24,27,30mmと準備されています。会社名や屋号の文字数に合わせて選ぶとよいでしょう。社名が10文字前後であれば24mm、15文字以上なら27mmあれば足りるとされています。
丸印:10mm以上30mm以内
丸印は法務局により、10mm以上30mm以内の正方形に収まるサイズと規定されています。直径18mmまたは21mmであるのが一般的です。21mmは大きめのサイズで、印鑑を押したときにしっかりとした印象があります。風格を求める場合は21mmの丸印がおすすめです。
また、丸印には天丸タイプと寸胴タイプの2種類の形状があります。天丸タイプは法人印として定番の形。蓋つきで印面を保護できるほか、風格や重圧感があります。寸胴タイプは個人印と同じシンプルでスマートな形状。天丸タイプと比べてリーズナブルに購入できます。本体の形状は特に規定がないため、好みの方を選んで問題ありません。
角印と丸印の違い 4.押し方
角印・丸印は、押し方にも違いがあります。どちらも法律で定められているわけではありませんが、一般的とされる押し方があります。ここでは、角印・丸印それぞれの押し方を解説します。
角印:文字と印影が重なるように押す
角印の押印位置に正式な規定はありませんが、書類の会社名や代表者名が記載された箇所に重なるように押印するのが一般的です。
押印位置が決まっていないとはいえ、統一感なく押印するのは相手にあまり良い印象を与えません。記載文字の右側に、最後の文字と印影の中心を重ね、バランスを揃えるようにして押印しましょう。文字に重ねるように押印することで、書類の偽造や悪用を防止する役割があります。
丸印:文字と印影が重ならないように押す
丸印は 、契約書などの末尾にある会社名や住所・氏名などの右横に押すのが一般的です。角印と異なり、会社名や会社住所と重ならないように押印します。
署名に重ねるように押印したからといって問題はありません。しかし、押印された印影が正しいものかどうかを印鑑証明書と照合するため、できるだけ被らないように押す方が良いとされています。
書類に「印」という文字が記載されている場合は、「印」の文字の上に丸印を押印することが一般的です。また、角印と丸印の両方を押印する場合は、会社名や住所が記載されている部分の中心に角印を、文字の右横に丸印を押印するようにしましょう。
まとめ
角印は法人の認印、丸印は法人の実印のような役割があります。角印は請求書や見積書などの簡易的な書類に、丸印は契約書や商業登記など重要な書類に用いられるのが一般的です。
それぞれ用途が異なるうえ、サイズや形状、押し方にも違いがあるため、正しく理解しておくことが大切です。