役職印とは?代表者印との違いや作成時のポイント

役職印は、会社名と役職名を刻印した印鑑で、書類に記載された内容の責任が誰にあるかを明確にする役割があります。役職印には「課長印」から「代表取締役社長印」までさまざまなバリエーションがあります。役職印のなかでも、代表者の役職が刻印され法務局に登録されたものは「代表者印」と呼ばれます。

今回は、役職印の主な特徴と役割、作り方などをご紹介します。

役職印とは?

役職印とは、会社での役職や所属を示すための印鑑です。社内文章や稟議書など決済を取るだけではなく社外の契約書などに押印されることもあります。

役職印の主な目的は、書類に書かれた内容を社内の誰が承認したのかを確認する、もしくは責任の所在は誰にあるのかを明確にするものです。社外と契約などを交わした場合は、たとえ代表取締役でなかったとしても、役職者がその契約事項の代理責任者として権限を有する者として効力を発します。

社内外において役職印の効力は強く、社内での重要な取り決めや大事な契約を交わす際に重要な存在となります。

代表者印と役職印の違い

代表者印と役職印はどちらも役職を刻印したものですが、それぞれで役割が異なります。状況に応じて使い分けることが必要です。

ここでは代表者印と役職印について解説します。

代表者印について

代表者印には、会社名と代表者の役職が刻印されます。会社設立の際に作成し、法務局で印鑑登録が必要です。会社の代表者が、対外的な契約や法的な手続き(不動産契約や連帯保証の契約など)を行う際に使用します。法的拘束力は高く、会社の意思決定をするためにはもっとも重要な役割を果たす印鑑です。

代表者印に多いのは丸形のタイプです。サイズやデザインに関する細かな規定はありませんが、会社を代表する印鑑なので印影が変わらない素材で作成する必要があります。会社内でも使用頻度が高いため長持ちする印鑑を選ぶことが大切です。

役職印について

役職印は、部長や支店長などの役職者が利用する印鑑です。会社名と役職名が刻印され、会社によって使用用途や役割に違いがあります。役職印の押印によって、それぞれの役職者が社内外の重要書類の内容に対する責任を証明します。

役職印はさまざまなバリエーションのある印鑑です。会社のみならず、個人事業や組合、NPO法人、理事会やPTAなどの組織も役職印を作成できます。

法務局への登録は不要なうえ、必ず作らなくてはいけない印鑑ではありません。とはいえ利用頻度が高いことから、作成している方は多くいます。

役職印の作り方

役職印を作るには、彫刻する文字・印鑑のサイズ・書体・印鑑の材質を検討する必要があります。刻印されたときに提出先の相手に見やすく、押しやすい質感であるかどうかも大切な要素です。

こちらの章では、役職印を作る際に重視するポイントについて解説します。これから役職印の作成を考えている方は、ぜひご覧ください。

彫刻する文字

役職印を作成する際は、まず彫刻する文字を決めます。印文は中文と回文に分けて刻印されます。印鑑の中央に印字されるのが中文、印鑑の外枠に中文を囲む形で書かれるのが回文です。

回文には会社名、中文には役職社名を2行ほどでそれぞれ刻印します。回文と中文を一目見ただけで、会社名と役職名が相手にはっきりと伝わる役職印を作ることが大切です。文字のバランスをよく見て、印鑑のデザインを考える必要があります。

サイズ

役職印で推奨されるサイズは、直径で約15〜16.5㎜、もしくは18mmです。代表者印や会社銀行印よりは、比較的小さいサイズの印鑑を選択するとバランスが良くなります。自社の取り決めに従った印鑑選びが必要です。

印鑑作成後は、社内での厳重な管理と定期的な印鑑のメンテナンスを行います。役職印の購入元の業者に確認して、交換や校正などのアフターフォローが必要になったら問い合わせると良いでしょう。

書体

役職印で使用されている書体には、下記の3つがあります。

・篆書体(てんしょたい)
・印相体(いんそうたい)
・古印体(こいんたい)

それぞれの書体の特徴について解説します。

篆書体(てんしょたい)

篆書体は、中国から伝えられたもっとも古い書体です。約2300年前の秦の時代に、始皇帝の命によって漢字をまとめ上げられて「小篆」という文字が誕生しました。象形文字をベースとしており、重厚感のある印影を作り出します。

日本銀行の紙幣やパスポート、個人の実印まで幅広いシーンで使われている書体です。法人関連の印でも、頻繁に使用されています。

印相体(いんそうたい)

印相体は、昭和初期に案が出された中心から八方になっている形の書体です。篆書体から進化した書体で、「吉相体」や「八方篆書体」ともいわれます。印鑑の枠部分に文字が接しているのが主な特徴です。

ほかの書体と比較すると可読性は低く、偽造や盗用防止に効果が高い書体といえます。印鑑の種類を問わず、幅広く使われる書体です。

古印体(こいんたい)

古印体は隷書体(篆書体を元にして簡略化された書体)を元にして作られた書体で、7〜8世紀頃に生まれました。日本古来の鋳造物によって作られており、独特の線のバランスや強弱ある文字を印影に映し出します。

可読性は篆書体や印相体よりも高く、偽造される可能性がある点がデメリットです。法的拘束力の高い役職印よりも、個人実印や銀行印に用いる方が向いています。

材質

役職印で選ばれる材質には、下記の4つがあります。

・柘(つげ)
・薩摩本柘
・彩樺(さいか)
・オランダ水牛

印鑑の持ち運びや押しやすさが変わる点が素材の選び方のポイントです。こちらの章では、それぞれの材質の特徴について解説します。

柘(つげ)

柘は別名「アカネ」ともいわれる素材です。印鑑の上部を示す「アタリ」といわれる黒丸がついています。繊維分の密度が高く、硬くて粘りのある材質のため印鑑の彫刻には非常に適している材質です。捺印性も高く、さまざまなシチュエーションで重宝されています。

朱肉の油が染み込むと劣化してしまうため、長持ちさせるには丁寧に手入れが必要です。印鑑を使ったら、こまめに朱肉を拭き取れば長く保ちやすくなります。

薩摩本柘

薩摩本柘は、鹿児島県原産の柘を使った質の高い素材です。一般的な柘よりも繊維分の密度が高く粘り強さもあり、美しい木目を堪能できます。高級感ある美しいフォルムが特徴です。

乾燥には弱いため、乾燥による劣化を防ぐために専用の保管ケースを購入する必要があります。

彩樺(さいか)

彩樺は、真樺の天然木と樹脂を高圧加熱処理することによって作り出された素材です。ひび割れが極端に少ない天然木の美しい木目が、高級感を引き出してくれます。きめの細かい硬い材質で、丈夫な印鑑を作成可能です。

より丈夫で長持ちしやすい役職印を作成したいのであれば、彩樺を選択肢にいれても良いでしょう。

オランダ水牛

オランダ水牛は、主にオーストラリアや東南アジアなどの食肉牛の角を使用しています。
朱肉がつきやすく、捺印のしやすさや丈夫さにおいても優れた材質です。淡色・純白・濃色など、カラーバリエーションも数多くあります。

オランダ水牛には、印鑑の頭頂部に芯持がついている高級品があります。水牛の角の中心部であったことがわかる白い点のような「芯持」がある印鑑は、耐久性が高くなるためひび割れを防いでくれます。

まとめ

役職印は、社内外で代表取締役以外の役職者が使用します。役職印の押印によって、書類内容の責任の所在を明示します。そのため、長持ちしやすくはっきりと押印ができるよう作成することが非常に大切です。

印鑑のサイズや印字する書体、印鑑の材質によって使い心地も変わります。経年劣化しやすい素材で作ると、ひび割れや欠けなどのダメージを受けて、印鑑が使用できなくなってしまう場合があるので注意が必要です。長く使えて、社内外の契約をスムーズに進めるためにも適した材質で役職印を作成しましょう。