今まで使用した経験のない方にとって、万年筆はちょっと敷居が高いと感じるのではないでしょうか。
しかし、近年幅広い価格帯のものが登場しており、気軽に求めやすくなっている文房具の一つと言えます。
万年筆は本体にインクをセットして使うので、インクを補充することで長く使用できるのが良いところです。
ここでは、そんな万年筆を長く愛用するための豆知識やおすすめブランドについてお伝えします。
万年筆の寿命
万年筆の本体は様々なパーツで構成されていますが、中でも重要なのが「ペン先」と呼ばれる先端部分です。
そのペン先の素材によって、書き味や耐久性が変わってくると言われています。
基本的には腐食や摩耗に強い合金が使われており、14金や18金、21金など金を含む素材の他、リーズナブルなステンレス製のものも広く出回っています。
金を使ったペン先が付いた「金ペン」は、上手にメンテナンスすることでほぼ永久的に使用できると言います。
ステンレス製のものは比較的寿命が短いですが、毎日使用しても約10年以上は持つと言われています。
インクの使用期限
実は万年筆のインクにも賞味期限のようなものがあります。
製造された日から2~3年が期限の目安とされており、一般的にはボトルインクよりもカートリッジインクの方が期限が短めです。
インクは長期間経過すると水分が蒸発して濃度や色味が変わってしまいます。
時折「10年前のインクでも使えた」という話も聞かれますが、一見問題ないように思えてもいざ書いたときに色褪せて見えたり、ペン芯にインクが詰まったりすることもあります。
期限の切れたインクをどうしても使用したい場合は、リスクを承知の上で使うことになるでしょう。
インクを長く持たせる保管の方法
お気に入りの万年筆をできるだけ長く愛用するためには、いくつかのポイントがあります。
まず、使用しないときはキャップをきちんと閉めておくことが重要です。
キャップの締まりが甘いとインク中の水分が蒸発する原因になり、万一乾燥してしまった場合はペン芯やペン先内でインクが固まってしまいます。
固まったインクは洗浄して取り除けることもありますが、最悪の場合はインク詰まりのために修理が必要となります。
さらに、キャップをしておくことでペン先の破損を防ぐことにもつながるでしょう。
また万年筆を縦置きで保管する際は、ペン先側を上に尻側を下にして置きます。
ペン先側を下にして置くと、インクが漏れ出す恐れがあるためです。
インク自体を長持ちさせる方法としては、水分の蒸発が起こりやすい直射日光を避けて保管することも大切です。
万年筆は毎日使用するのが基本であり、スムーズに書き続ける秘訣です。
そのため、長期間使う予定がない場合には万年筆内のインクを空にして、水できれいに洗浄した後にしっかり乾燥させておきましょう。
万年筆へのインクの入れ方
万年筆のインクは、大きく分けてカートリッジインクとボトルインクの2種類です。
カートリッジインクは対応する万年筆にそのままセットして使えます。
一方のボトルインクは回転吸入式の万年筆で直接補充したり、「コンバーター」という専用の吸入器を使っての補充が可能です。
万年筆は、その製品によってカートリッジインクを利用できるものとコンバーターを利用できるもの、両方に対応できるもの(両用式)とに分かれます。
またカートリッジインクやコンバーターは、基本的にその製品に対応した万年筆でのみ使用できます。
そこでカートリッジ式とコンバーター吸入式、それぞれのインク補充方法について紹介します。
1.カートリッジインクの場合
カートリッジインクは筒状の容器にインクがあらかじめ詰まったもので、取り換えるだけで簡単にインクを補充できるのがメリットです。
補充時は万年筆の軸を回して外し、カートリッジインクを首軸にまっすぐ差し込みます。
その後ペン先側を下に向け、インクが先端から出てくるのを待ちます。
カートリッジ式の場合、新しい万年筆に初めてインクを補充する際はインクが出てくるまでに時間が必要です。
それでもなかなかインクが出てこない場合には、カートリッジの側面を軽く圧迫してみましょう。
2.コンバーター吸入式の場合
コンバーターを使う際は、まず軸を外して首軸にコンバーターを差し込みます。
コンバーターのつまみを回転させて、ピストンを完全に下げてからペン先をボトルインクに差し入れます。
このとき、ペン先全体がインクに浸かる深さまでしっかり入れるのがポイントです。
そのままコンバーターのつまみを回してピストンを上げインクを吸い込んだ後、ペン先や首軸に付いたインクをティッシュなどで拭き取ります。
インクが出ないとき
万年筆のインクが出ない場合は、まずインクが空になっていないかを疑います。
軸を外してカートリッジやコンバーター内のインクの残量を確認し、空になっている場合はインクを補充しましょう。
インクが残っているのに出ないという場合は、カートリッジやコンバーターとペン先の間に空気が入り込んで邪魔をしている可能性も考えられます。
そのような場合は、首軸部分を指で軽くはじくことで解決します。
それでもインクが出ない場合は、インクが乾いて固まったことで詰まったのかもしれません。
カートリッジ式の場合はカートリッジを外し、ペン先を水に浸けて固まったインクが溶けるのを待ちます。
コンバーター式は同様にペン先を水に浸たし、つまみを回転させてインクが流れるように促します。
水で洗っても改善しない場合は、万年筆を修理できるお店に依頼する必要があるでしょう。
インクのおすすめブランド
現在も世界中で愛用されている万年筆には様々なメーカーがあり、インクも実に多種多様です。
それぞれ色彩や深み、書き味に魅力がありますので、一度はまると抜け出せなくなるほど奥が深い世界と言えます。
インクのブランドには、どのようなものがあるのか代表的なものをご紹介します。
1.パイロット
パイロットと言えば、大正7年に設立された国内を代表する老舗文房具メーカーの一つです。
本格万年筆はもちろん、近年は「カクノ」や「コクーン」といったリーズナブルなモデルも登場しており、インクもより気軽に楽しめます。
ブラックやブルーブラックなどの定番色だけでなく、ピンクやバイオレット、グリーンなどのポップな色も揃っています。
2.セーラー
広島県呉市で明治44年に誕生したセーラー万年筆も、国内屈指の文房具メーカーとして有名です。
先駆者として長く万年筆文化を牽引してきた、一流メーカーならではの多彩でユニークなラインナップが魅力です。
水に強くにじみにくい顔料インクの「極黒」をはじめ、日本の四季を表現した「SHIKIORI(四季織)」など、ネーミングも面白いです。
3.プラチナ
こちらも国内老舗メーカーの一つ、プラチナ万年筆です。
シックな雰囲気のボトルインクは顔料インクと染料インクがあり、鮮やかなローズレッドや落ち着いたブランセピアといった独特な色合いがあります。
カートリッジインクには、イエローやライトブルー、ピンクといった今時らしい色もあり、選ぶのが楽しくなりそうです。
4.ペリカン
万年筆の本場・ドイツの文具メーカーであるペリカンは、日本国内でも圧倒的な知名度があるブランドでしょう。
代表的なボトルインクの「4001インク」は不動の人気を誇るロングセラーで、ブルーブラックやロイヤルブルー、ターコイズなど青系の色味が美しいです。
また宝石の名を冠した「エーデルシュタインインク」も特別感があります。
5.ペント
世界の文房具をセレクトした通販ショップ・ペンハウスでは、オリジナルブランドの「ペント」からボトルインクが販売されています。
「ペンハウスブルー」をはじめ「シンフォニー」、「コトバノイロ」など独特な世界観をイメージした楽しいカラーが目白押しです。
6.高級ブランド
文房具メーカーの中でもモンブランやウォーターマンなどは、高級ブランドとして知られています。
モンブランのインクは機能性とデザイン性に優れ、他にはない洗練されたボトルです。
またウォーターマンのブルーブラックは美しい青み と お洒落なボトルで、万年筆愛好家から愛されています。
【まとめ】万年筆のインクには寿命がある!正しく保管をして長く使おう
一生ものと言われる万年筆だからこそ、大切に使ってなるべく長く愛用したいものです。
そのためには万年筆やインクの特性を知り、正しく使用することがポイントと言えます。
特にインク詰まりを起こすとプロの修理が必要となる場合もありますので、インクの保管や使用期限を守ることは重要です。